【そらる】雨隠レンボ(雨垂れと約束)/琉唯 ページ26
「父の事業が成功して、アメリカに異動することになったの。」
「歌い手は…?」
「……出来なく、なっちゃった。やりたかった…よ!仕方ないんだ。だから…もし…そらるくんがやるなら、一番のリスナーになるから!言って!応援する!SMS沢山しよ!そらるくんは私以上のいい人が居るよ!そらるくんは…優しくて格好良いからきっと良い出会いがあるよ。」
A以上に、好きな人は…良い人は…居ないって言うのに。
「…歌い手になったら教える。でも、A以上にいい人なんて居ないよ…。」
「じゃあ約束する。何年…いや十何年かかっても絶対に日本に帰ってくる。その時は、また、その声を出来れば生で聞かせて…ね…?」
彼女の吸い込まれる様な美しい黒い瞳から一粒はらり、と純粋な涙が…雨が降ったのを見た。
しかし、無かったかの様にAはそれを拭わず、それは微かにAの顔を光らせただけだった。
見間違いだろうか?
「約束…。待つよ。それまでに、トップクラスの歌い手になってやる!」
「う、ん!応援してるから!さようなら。じゃあ、ね。」
「さよう…なら。」
彼女は後ろを向いて、何か呟いた。
そして振り向きながら手を振って…いってしまった。
フラれてしまったと言う事か。
でも、彼女はどの道こうするしかなかったんだろう。
それなら仕方ないじゃない…か。
でも、この痛みは何だろう。
これは、子猫や雛が死んだ時とは違う痛みだ。
気づけば目が熱くなり、涙が零れおちる。
もしかしたら初めて流した自分の為の涙かもしれない。
子猫や雛の為に涙を流すことはあっても、自分の為に涙を流した事はなかった気がする。
しばらく俺は泣いて居た…。
これでこの話はおしまい。でも、全てが終わった訳じゃない。
勿論彼女の『雨隠れ』は終幕となり、俺の恋慕も断ち切られた。
でも、気持ちはすっきりしている。
それに俺の『雨隠れ』は終わらない。
Aを笑顔で、ちゃんと上手い歌で、最高の友達として、迎える為、俺は今日もあのバス停へ行く。
いつのまにか俺の雨嫌いは消えて居た。
この雨が出会いを教えてくれたから。
雨が降る度、彼女との思い出を思い出す。
何年たってもAを忘れない。
その想いをくっきり刻むように、今日も俺の声は雨で揺れる空間にただ静かに響いていた。
去り際に彼女が呟いた言葉、そして意味。
それは二人の周りを舞い、足元へ消えた雨粒しか知らない。
『雨音が響いて居ますね。』
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あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)
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