【そらる】雨隠レンボ(雨垂れと出会い)/琉唯 ページ23
ほおを膨らませたまふまふは帰って行った。
こうして俺の貴重な睡眠時間はまふまふに呆気なく消費されてしまった。
益々、機嫌が悪くなる。
午後の授業もさらりと受け、直ぐに終礼となる。
今日は時間が進むのが早く感じる。
それに、今日は早く家に帰りたかった。
校舎を出る時は、雨が止み、光が地上にさしていた。
そこそこ機嫌が良くなり、それでもまとわりつくような湿気を払いながら手に鞄を引っ掛け、早々に校門を通り抜ける。
その時は良かったが、俺は後々後悔する事になる。
「まさか…」
つい、口から呟きが漏れる。
そう、帰ってる途中で雨が降り出したのだ。
当然傘はない。
学校から出た時は止んでいたのに…。
雨が風に揺られ、鞄が濡れる。
ああ…最悪だ…。
こんな事なら校門を出る時、傘を持って来れば良かった。
今は公園横の錆れたバス停に雨宿りしている。
学校に戻れもせず、家に帰れもしないからだ。
ここはもう使われておらず、バスは来ない。
後悔と苛立ちだけが頭を輪廻する。
その時だ。
風が一段と強くなり、頭上から大きな声が降って来た。
「すみませーん!誰か!その傘止めてー!」
坂の上から傘が降ってくる。
確実にぶつかる、と思った俺は風で転がり落ちてくる傘をなんとか両手で受け止める。
そして坂道を駆け下りて来た彼女にそれを渡した、は良いのだが…傘は滅茶苦茶に壊れてしまっていた。
「あちゃー…壊れちゃったなぁ…」
「ごめんなさい…俺が上手く受け止められてたら…」
「いや、元々壊れかかってたんだけど風で飛ばされて壁とかにぶつかってたら壊れちゃったみたい。仕方ない。止むまで待つか。あの…ここで雨宿りして行っていい?」
静かに一人で居たかったが、一人位増えてもいいだろう。
「全然大丈夫ですよ。」
「きみ、西中の子だよね?私、東中なの。」
よく見れば市内のもう一つの中学校の制服を着ている。
しかしこちらの道を歩いてくるのはおかしい。
「そうなんですか?でも、なんでここの道を?」
「あ、私ね、東中地区と西中地区の間みたいなところに住んでて、ギリギリ東中の範囲なの。」
「そうなんですか。」
「あ、君何年生?」
「えっと…中二です。」
「私も中二!偶然!敬語外そう?ってごめんね、こんな馴れ馴れしくて…。」
確かに俺だったら初対面の人にこんなに話しかけられない。
「いえ…大丈夫で…大丈夫だよ。」
「良かった!名前なんて呼べばいいかな?」
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あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)
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