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*side you
志麻さんと最初に出会ったのは、半年前の雨の日だった。
初めて出来た彼氏に騙されていたことを知って、小洒落たブランドもののワンピースがどれだけびしゃびしゃになっても構わないと言わんばかりに橋に突っ立っていた。
そこに傘を投げかけてくれたのが志麻さん…だったのではなく、そんな私を彼女さんとのデート帰りに見かけたのが志麻さんだった。
目に入った時、彼女さんと仲良くていいね、なんて嫉妬混じりの八つ当たりを心の中でした。
次に見たとき、彼氏の方が居なくなっていて何事かと思っていたら、いつのまにか手を握られていて、そのまま彼の家まで連れて行かれた。
タクシーを拾ってくれた彼と、彼女さんと、私の3人で乗ったタクシーはぎゅうぎゅう詰めだった。
気まずくなって身体を縮こめた私の手を握ってくれた志麻さん。
その時にはもう、恋に落ちていたのかもしれない。
家に着くなり、私にシャワーを勧め…というか強制的に風呂場に押し込められ、温まって出て来る頃には彼女さんを家に送り届けた後だった。
濡れた髪は、彼が好きだというから長く伸ばしていた。
志麻さんは丁寧にドライヤーでその髪を乾かしてくれた。
鏡には、目を腫らした女子中学生がいただけだった。
私って惨めだ、そう自己嫌悪に嘲られ、首を吊った自分すら思い浮かんだその時、彼は私に低めの声を投げかけた。
「俺、髪短い方が好き」
どんな意味で言ったのかは分からなかった。
それでもその時の私にはそれで十分すぎたんだろう、その場で背中まで伸ばした髪は顎程でばっさり切って、そのまま彼の胸で泣いた筈だ。
何も言わずに抱き締めて、抱いて、好きだと何回も彼が言うものだから勘違いしてしまっているだけなのかもしれない。
その日から、彼は私を定期的に部屋に招くようになったし、彼女さんの目を盗んで出かけることも増えた。
兄妹と誤魔化して色々な場所へ行った。
名義上は彼女さんのものだったのかもしれないが、きっともう、その時既に私は彼を手に入れられていたんだろう。
ずっと欲しかった恒久の愛が舞い降りたことで、私は有頂天になっていたんだ。
だから今になってこんな罰を受けることになるんだろう。
「…ごめん。もう…会えん」
ドアを開けるなりそんな事を告げられるとは。
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あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)
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