あの日の恋が嘘みたい。【歌い手】

＊ ページ14

季節は無情にも過ぎ去り、三月某日

とうとう、離任式の日が訪れてしまった

沢山の生徒に囲まれていたセンラ先生をどうにか捕まえて二人きりになれた

「…先生、結婚したって本当ですか…？」

「なんや、皆してそれ聞くなぁ。…Aさんには特別に教えると、結婚したんよ。他の子には内緒、な？」

¨特別゛なんて言葉にいつもだったら天にも昇る気持ちになるのに今日は、センラ先生から告げられた事実に胸が押し潰される

(わかってたはずなのにね)

「…やっぱり、そうでしたか。ご結婚おめでとうございました」

そういって私は黄色いチューリップの花束を差し出した

「わざわざありがとうなぁ。Aさんには色々と手伝ってもらって悪かったなぁ、助かってたよ」

「いえ…私がやりたくてやっていたので。
センラ先生、今までありがとうございました」

「…こちらこそありがとうな。勉強頑張りよ」

「はい…さようなら」




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先生はずるい人だ

きっと私の気持ちにも、チューリップの花言葉にも気づいていた

だから、私にだけ「特別」なんていってこの恋を諦めさせようとしたんだろう

最後まで、気をつかって…

どこまでもズルくて、素敵な人だ。






「さようなら、センラ先生。愛していました」

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黄色いチューリップの花言葉
「望みのない恋」
「報われない恋」

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