【志麻】あの日の恋が嘘みたい。/星結 ページ2
*side you
「Aの恋って、結局無謀なんだってば」
「無謀だからしないなんて、馬鹿みたい」
「そういうことじゃなくて…私は純粋にあんたを心配してんの」
「大丈夫だから。私も彼も、わかってるもん」
「…悲恋になるよ?」
「悲恋なんて信じてない。じゃ、私行くね」
放課後のクラスルームはもうあとあの子しかいなくなって、大層寂しかろう。
が、それを世間話や痴話で賑やかす程のテンションも時間も私には無い。
今はただ、ここから徒歩20分弱のあのマンションの121号室へ行くだけしか頭に無い。
無い無い続きで嫌になるが、本当に私は彼以外に何にも無いんだ。
運動も勉強も、「平均ちょい下」で安定した私は、つくづくヒロイン向きの人材じゃないと常日頃から感じていた。
最近流行りのモブと主人公の恋愛すら味わわせてくれないのが、この現実の道理。
脇役に目をくれるヒーローは、ここにはいない。
あのマンションにしか、いないんだ。
志麻さんと会ってからの人生は、それなりに色付いた方だったと思う。
クラスメイトらからすれば味気なく淡白に感じるかもしれないが、私にとっては極彩色より濃厚な味わいだった。
浅はかの極地に位置するこの行為の中に愛が生まれる瞬間を目の当たりにしたことは、私の「平均ちょい下」の人生において最大の発見となり得た。
いつのまにか快感を放り出して唇を求めた。
抱きしめることに集中し過ぎた。
身体の欲求よりも精神の欲求が勝るとこうなるんだ、と学習した。
私は中学3年で、志麻さんは成人だ。
それなのにお互いがお互いを求めてやまない。
毎日通話するだけじゃ物足りなくなって、彼女さんが去った寝室でただ抱きしめ合ったのは夏休みの終わり頃のことだっただろうか。
買ってきたアイスクリームが溶けることも厭わず、無我夢中で体温に感覚を尖らせた。
「好き」と零せば木霊のように「俺も好き」と甘い声が降り注ぐ。
そんな愛をもう半年も貰ってきた。
終着点は未だ見えない。
こんな複雑に感情絡みで言うから何やら大層な出来事のように思えるが、簡単に言えば、彼女のいる社会人と本気で恋愛をしている、そういうことだ。
終わりを考えない私達は、いつだって現在主義で愛し合う。
齢15にしてここまで精神愛を極めるとは何事かと思われるだろうか。
それでも私は彼がいないともう生きていけやしないし、彼もきっと、私をそういう存在として見ている。
これが自惚れだったら、どれほど良かったのだろうか。
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あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)
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