師弟関係-男主- (ページ19)

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Reunion.ⅩⅧ ページ19

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____気づけば予定時刻を過ぎていた。

「……却説、」

男は何処か感得げに息を吐き。

吐いた後、横を見詰め、敦の姿を捉えた。

「……敦君が云いたい事は判るよ。

…何故、名探偵である彼___則(すなわ)ち、江戸川乱歩の名を知っているか？

…そう問いたいのだろう？」

椅子に腰掛け乍、男は先刻と同じ様な口ぶりで云った。

敦は黙考した侭、答えない。

そんな敦の姿勢を特に言及する事もなく、紡ぎ続ける。

「理由は明瞭。遠方に居ても耳を掠めて来る程、彼の名を皆が云うからさ。

それだけ、名が知られている。となれば厭でも憶えるだろう？

──後、誰かが『名探偵を知らぬ者は愚者』…と云っていたのをその侭記憶…否、憶えていたのを口にした迄さ」

辺りは、二人の影を濃く彩り始め、遠くで烏の嘶(いなな)く声が響き渡る。

そして、続きを云おうと口を開くも敦に因って、為せなかった事。

これが後に男にとって痛手となる事を男本人は知らずに居る。

「……貴方は、一体、何が目的何ですか…？」

「うん、中々に善い問い掛けだね。
寧ろ…善過ぎて何だか気分が優れない気がして来るのだけれどねぇ……」

ほんのりと顔に色が付き始めたのを良い事に、今度こそ言葉を紡ごうと口を開いた。

「……先刻も云った通り、花を河の中へ落としてしまったから取ろうとして入ったのと、

路へ迷ってしまったから身を投げたと云う訳なので有って、敦君に。

_____……君に近付こうとして入った訳じゃあ無いんだ」

…但し、呟いた言葉の中には少々意図しないものが混じっていたのであった。

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