Torenia Fournieri -2-

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『A、そろそろフロント行く？』




「あー…うん、そうだね。」




ここに来てからどれくらい経ったのかな･･･




最初こそ早く逃げ出したいと思ってたのに、いつの間にか時間なんて気にならないくらい、ニカとの会話を楽しんでいる自分がいた。




そう認めざるを得ないのも、ニカがこの時間の終わりを告げたことに なんとも言えない想いが込み上げてきてしまったからだ。




･･･もっと一緒にいたかったな、なんて。




自分がこんなに単純だとは思わなかった。




アルコールでふわふわした頭が、感情の移り変わりのスピードに追いつけないでいる。




2人でちびちびと呑んでいた日本酒も、数十分前には空になり、テンポよく続いていたはずの会話も途切れがちになって･････




お互いに、お開きにしよう、と言い出すのをどこか躊躇していたのかもしれない。




･･･いや、私はそうでもニカは分からない。




明日はオフだけど、きっとニカは仕事だ。




世のサラリーマン、OL、学生達は、月曜が休みなんてことは滅多とない。




週末が明けた後の週初めに誰もが味わう憂鬱な気分とは無縁だけど、ニカは違うだろう。




私がいなかったら、小一時間だけ呑んで、今頃は眠りに就いている頃だったんだと思う。




･････長居しすぎちゃったな。




ふぅ、と小さく溜息を吐いたニカに、心の中で「ごめんね」と「ありがとう」を呟いた。




ゆっくりと立ち上がったニカを 座ったまま見つめていると、不意に重なった視線。




『……。』




「……どうかした？」




『…A、ごめん。』




「え？」




『こんな遅くまで引き留めといてマジで悪いんだけどさ……1人でフロントまで行ける？』




思い詰めたような表情に、なんでニカがそんな顔するの、って胸が締め付けられる。




「…いいよ、大丈夫だから。」




『……。』




「もう酔いも覚めてるし……さっきみたいにフラフラしてないから、心配しないで？」




『……やっぱ、俺が代わりに行こうか？』




眉を下げてそんなことを言うから、




「ふふ、絶対それはおかしいって (笑)」




笑いが止まらなくなる。




フロントの人もびっくりだよ？




隣の部屋の人の代わりに、ルームキーのスペアを易々と渡すわけないでしょ･･･




『もー…マジで心配なんだけど、』




「大丈夫だってば (笑)」

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