Torenia Fournieri -2-

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『……Aはどうなの？』




グラスに入っていたお酒をクッと一気に喉に流し込むと、真っ直ぐに私を見つめてくる。




「どう…って何が？」




『彼氏いないの？』




「……さぁね、」




なんて、平静を装ったフリをするけど･･･




まさかそんなことを聞かれるとは思わなかったから、内心ものすごく動揺してる。




そりゃあ、呑みながらする話っていったら 普通は仕事のことや恋愛のことなんだろうけど、私とニカはそんな踏み込んだ話をする仲ではない。




『…言えないんだ？』




「言えないじゃなくて言わないの。」




『……ふーん、まぁいいけど。』




「…ニカは？」




『Aが答えないから 俺も言わない。』




「ふふ、あっそ (笑)」




私もグラスの残りを呑み干すと、何を言わずともそこに次の1杯を注いでくれるニカ。




明らかに不貞腐れた顔してるのに、表情と行動が伴ってなくて 思わず吹き出しそうになる。




「…ありがと、」




『美味いっしょ？』




「うん、日本酒はこれが1番好き。」




『え？』




「…ん？」




『……てかさ、さっきもそうだけど これ見て俺に「どこ出身？」って聞いたよね。』




「あー…うん、」




『日本酒に詳しいの？』




「まぁ、人並みには…」




そりゃあ、好きだから 色々ネットで調べたりするし、旅行のお土産には必ずと言っていいほど お酒をいくつか選ぶくらいだし･･･




『……なぁんか怪しいな、』




「え？」




『……。』




ジト目で睨んでくるニカ。




何それ、野生の勘的なやつ？(笑)




「……。」




うーん･･･別に言っても大丈夫かな。




事務所には東京出身東京育ちってプロフィール登録してあるけど、ニカにバレたところで･･･




そもそも私は メディアに露出することもほぼないに等しいし、なんの支障もないはずだ。




「…私、実家が福島なんだよね。」




『えっ、マジで？！』




「ふふ、そんな驚く？(笑)」




『いや……こう言っちゃなんだけどさ、Aってめっちゃ都会の人って感じだし…』




「えー…嘘だぁ、」




『…Aって仕事何してんの？』




「っ、え？」




『あ、モデルとか？』




ちょ･･･っ、なんでそんな鋭いの？！




どれだけ認知度が低くても、ネット社会が進むこのご時世、名前と職業を入れれば 所属事務所をはじめとする情報はいくらでも調べられる。




･･･シラを切り通すしかない。

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