Torenia Fournieri -2-

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『あ……の、どうしたんですか？』




「…え？」




『もしかして、気分悪い？』




ぼんやりとする視界の端に、私を心配そうに見下ろす1人の男の人がいた。




･････最悪だ。




知らない人とはいえ、こんなところを見られてしまうなんて恥ずかしすぎる。




「…大丈夫です、」




いつまでも蹲ってるわけにはいかない。




そう思い、ゆっくりと立ち上がる。




『ちょ…っ、』




あ･･･ヤバい、倒れる･･･！




アルコールが完全に回ってしまった身体で、長時間しゃがみ込んでいたからだ。




受け身の体勢を取らないといけないのに、思考力の低下した頭は上手く働かない。




部屋を閉め出された上に、酔っ払ってよろけて倒れるなんて 滑稽な女にも程がある。




思わずギュッと目を瞑ると、こんな状況にもかかわらずスーッと眠気に誘われる。




･･･もう限界だ。




飲酒後の睡魔って本当に恐ろしい。




スローモーションのように景色が反転しそうになったところで、ガシッと肩を掴まれた。




『ちょっと！大丈夫じゃないじゃん！』




「すみませ…ん、」




『めっちゃ冷えてるし…』




少し掠れた声に、何故だか安心感を覚える。




『……早く部屋に入りなよ。』




「…れない、」




『え？』




「入れないんです。」




そう言いながら、腕の中で彼を見上げる。




うわ･･･若いなぁ。




22とか23とか、きっとそのくらいだ。




呑みすぎた翌日にコンディションが最悪になるアラサーの私には、彼が眩しすぎる。




『……なんで入れないの？』




「ルームキーが1つしかなくて……寝てるから気付かないみたい、なんです。」




『…マジか、』




難しい顔でポツリと呟くから、さっき寝落ちしかけたのと共に忘れていた羞恥心が再び蘇る。




あー･･･マジかよ めんどくせぇなこの女、なんて思われても仕方ないだろう。




とりあえず、トイレだ。




アルコールを身体から抜きたい。




だけどその為には、このフラフラの身体に鞭打って、どうにかして1階まで行くしかない･･･




「あの……すみませんっ、もうホントに大丈夫なので。ご迷惑をお掛けしました。」




『いや、でも…』




「え？」




『部屋、入れないんでしょ？』




「あ……はい。だからフロントに、」




『……。』




「あの…」




『それなら、俺が行ってあげる。』




「……はい？」




何言ってんの、この人･･･

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