Torenia Fournieri -2-

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そこまで高くないヒールだけど、長時間立っていると爪先や踵が痛くなる。




「……ダメだ、出ない…」




優に30分は経っている。




あれから何度も電話を掛けたけど、多分、電源が入ってないんだと思う。




ホテルに電波が届かないわけがないし、わざわざ電源を故意に切る必要はない。




･･･となると、電池切れ。




それしかないよね。




ガックリと項垂れているうちに、だんだん頭がぼんやりとしてきた。




早くシャワー浴びて寝転びたい。




1日動き回った身体は、肩は凝ってるし足はパンパンで疲労感が半端ない。




フロントに行って事情を説明したらすぐに解決するんだろうけど･･･




もう一歩足りとも動きたくない、っていう気持ちの方が遥かに大きかった。




ていうか、まさかこの歳になって部屋を締め出されるなんて思わないでしょ？




恥ずかしすぎる･･･とか言ってる場合じゃないのは十分すぎるほどに分かってる。




でも･･･




もしかしたら、途中で目覚めて私がいないことに気付いてくれるかもしれない。




その可能性を信じて、ここで待つ？




･･･いや、そもそもお酒が入ってるのに途中で目覚める可能性なんて皆無に近い。




朝までずっと爆睡されるのは困る。




一体全体、何が悲しくて ホテルの廊下で一晩過ごさなくちゃいけないわけ？




悪いことなんて何もしてないのに！




「……。」




･････ヤバい。




またトイレに行きたくなってきた。




お酒を呑むとトイレが近くなるって言うけど、今日はそんなに呑んでないよね？




なんで今日に限って？




こうやって あれこれと考えるのも、いい加減めんどくさくなってきた。




あー･･･もう、このまま1階に行ってトイレ済ませて、その足でフロントに行こう。




スペアキーとか貰えるのかな？




いや、でもその前に フロントから部屋に電話してもらう方がいいのかな･･･




･････はぁ、気が重い。




厄介なことに、自分でも気付かない間に 座り込んでドアに凭れかかっていた。




立ち上がろうにも身体に力が入らないし、立ち上がったとしてもすぐに倒れそう。




あぁでも、なんとか立たなくちゃ･･･




うっかり寝てしまったら大変だし、まずその前に早くトイレに行きたい。




なんて脳内で葛藤していると、




ガチャッ




『うわ…っ、』




ドアの開く音と共に、男の人の驚いた声が 割と近くから聞こえた。

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