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もう一度首筋を噛まれ、声にならない悲鳴をあげる。
すると、吸われる感覚ではなく中に何か入ってくる感覚がする。
暫くしてまた少し紗奈の血を吸い、口に含みセンラは自分の手の甲を噛んで、血を流し込んだ。
そして2つの牙跡が付いている私の首筋をペロリと舐める。
その傷は、何事もなかったかのようになくなった。
「契約完了…」
センラの右腕を見ればくるりと囲うようにブレスレットのような模様がついている。だがそれはすぐに消えてしまった。
「…おやすみ…。紗奈。」
電源を引き抜かれたテレビのように意識が途切れた。
*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
何時間眠っていたのだろうか。
起きたらベッドに寄り掛かるように、床でセンラが寝ていた。
自分のためにベッドの場所を譲ってくれたのだろう。
結構血を吸われたはずなのに、体に何も変化が無く驚いた。これも契約の力なのだろうか。
「…さて、これからどうしよう…。」
他の3人と部屋が分かれて話ができない、というのは自分にとっては大ダメージだった。
自分の学校については多分仲間が今回も手配してくれるだろうし、1年間帰ってこなくたってそこまで心配はしないだろう。
だがなんとしてでもここから出なくては。
ここで一生を終えるわけにはいかないのだ。
頭の中はこれからの事と仲間のことでいっぱいだった。
真月…大丈夫かな?私みたいにあの4人の誰かと一対一になってるんだったら…変なこと言って殺されて無いかな?
水穂は?あの子結構寂しがりやだから…泣いてないかな?
紫姫をあきらめが悪いからきっと意地でも生きてるだろうなぁ。
不安といろんな他のいろいろな感情が入り混ざる。
「私が助けに行かなきゃ…。
絶対に助け出すから。待っててね。」
そう決意して、握った拳にぎゅっと力を込める。
そうだ、ここで死ぬわけにはいかないんだ。
まだやらなきゃいけないことがたくさんあるんだから…!
ならこの契約の力…存分に利用させてもらわなきゃ。
紗奈のトパーズ色の瞳が光った。
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時