29話 ページ40
センラが紗奈に触れようとした瞬間だった。
「っあ"⁉」
鈍い音が聞こえ、センラの脚に痛みが走った。
それに思わず倒れてしまう。
そして、センラは自分の足をやった犯人を見ていた。
「真月…?」
その目は悔しそうに、口をぎゅっと結んでいた。
そして紗奈もゆっくりと立ち上がる。
「…センラ。ごめんね。
もうここ出たら私とあなたは敵同士。
だから私たちの情報を外にばらすのは本当にやめてほしい…。」
「…?」
「だから今回の檻での…いや、『高嶺紗奈』に関しての記憶は全て消すね?
センラは気づかなかっただろうけど…。リボンで作戦をみんなに教えた時、このことも私はみんなに伝えてある。他の3人も私たちに関してのことはすべて思い出せなくなるよ。」
「…⁉は?
何言ってるん?じゃあもう二度と…」
「会えないし、会わないよ。
…でもね全部の記憶は消さない。いや消えない。センラが意識しても思い出さない深い深い心の奥底に蓋をする。
ごめんね。自分勝手で。
…好きだったよ。」
キスをしてから離れる。
警察もそこまでヤワではない。
もうこのことに気づいて行動し始めている頃だろう。
紗奈も、この傷ついた身体で警察と戦うことだけは避けたかった。
「紗奈っ…!」
「…。」
その声に紗奈は戸惑うことなく、魔法をかけ外へ出た。
他の2人とも合流し、本部にいた仲間と交流する。
首を撫でても、そこにあった契約印は現れない。
分かっているのに触れてしまうのはどうしてだろうか。
心残りがないと言ったら嘘になる。
一人ぼっちになったような感覚に、今だに慣れない。
トパーズの瞳から雫が伝う。
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時