24話 ページ33
「…紫姫、俺に言う事は？」
ゆっくりと志麻は自分の手を下ろし、紫姫を見た。
紫姫はゆっくりと口を開け、小さな声で呟くように言う。
「ぁ…、助けて…志麻く、…たすけて…。」
安堵したのだろうか、それとも恐怖の余韻がまだ残っていたんだろうか。
紫姫の目から1粒の涙が溢れた。
その瞬間、波のように志麻の近くに警備員たちが倒れていく。
「俺のフィリアや。返せ。」
菫色の瞳が揺れ、そして…
「わぁぁぁぁ‼‼」
そう叫んだのはエルドだ。
杖を志麻ではなく、紫姫に向ける。
その顔は狂気的で、混乱しているようだった。
攻撃が飛んできた瞬間紗奈は思わず身を飛び出して身代わりになった。
紫姫を抱きしめ、エルドに背を向ける。
そしてくる衝撃にぐっと堪えた。
が、いつまでたっても、その衝撃が来なかった。
大きな音が鳴っていたから不発と言うわけではないだろう。
紗奈がおそるおそる目を開けると…。
「いったぁ…、結構きたかもしれへん…。」
冗談交じりに行っているように聞こえるが、全然そんなことは無い。
抑えている場所からは服を血がどんどん汚している。
「…っ！センラ！」
紗奈は後ろによろめくセンラを支えた。
ドクン、と波打つ心臓がうるさい。
センラの出血量は最初よりも少ないものの、傷は酷く、肋骨を何本か折っていることは確定だった。
床にセンラが座りこむ。
「なんでっ、センラ…。」
「なんでやろうねぇ…？」
こんな時でもはんなりと笑うセンラが紗奈は許せなかった。
「センラ、分かってると思うけどなぁ…。
その傷、簡単には治んねぇぞ。」
うらたは顔を
魔力で傷つけられた傷は傷を癒せる吸血鬼でも、治すのは難しい。
「…治す方法、あるで。」
そう言ったのは肩で息をしている志麻だ。フラフラと歩いてきて紫姫の近くに立った。
少し遠くにいるエルドは坂田達に捕まっていた。
「紫姫、守ってやれんかった。ごめん。」
志麻に紫姫は抱きついて、泣き出した。
身体を優しく抱きしめながら志麻は答える。
「
戦った時についたのだろうか、志麻の腕にあった切り傷が消える。
ハグと言う行為も、愛情表現の一つに入り、志麻の回復を手伝った。
その時、視界が白く曇った。
それは一瞬で、目が慣れると紗奈は目を見開いた。
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作者名：朧月 天音 | 作成日時：2020年12月8日 21時
