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真月side
どうするの?
紗奈、どっちを取るの?
私の方を紗奈は向いた。もう決心がついたらしい。
「分かった。
…でも、
紗奈は、はっきり、冷たい貫くような声で言った。
これは怒っている。
冷静を装っているけど、内心は怒り煮えたぎってるはずだ。
「…ふ、その必要は無いわね。」
パチン!と指を鳴らし、目の前に現れたのはぼろぼろの紫姫だった。
ひゅ、と息が詰まり、しばらくは息をするのも忘れていた。
すぐにでも近づきたかったが、なんせ紫姫の近くにはエルドがいるから近づけない。
「分かった。」
私も紗奈も杖を投げて渡す。
それに満足したのかニタリと笑うエルドは悍ましかった。
『ツエヨモドレ』
「⁈」
エルドの手にあった杖は、いつの間にか自分の手が握っていた。
どうやってやったんだろう、と一瞬考え込んでがすぐにわかった。
紫姫の杖を使って、取り戻した。
紫姫の姿も、気付いたら紗奈の足元にいた。
あの一瞬で…、2つの魔法を同時発動させる。
それだけじゃなく今回使ったものは自分の杖じゃない。
相当、魔力の扱いに慣れていなければできなかったこと。
それは同じ魔法使いである自分がわかっていた。
「散れ。」
その時、前方から声が聞こえてきた。
鋭く、怒っている。
警備員が道を開けると、そこにいたのは約1ヵ月ぶりに見た紫色の髪…志麻がいた。
その後ろには水穂達もいる。
警備員達は顔真っ青にさせた。
エルドでさえ、突然の出来事で驚いているのがうかがえる。
志麻の瞳は曇り、汚物を見るような目で警備員達を見渡していた。
有無を言わせず、少しでも反応したら殺されそうな勢いだ。
「…紫姫を返せ。」
志麻の伸ばした手首には遠くから見ているのにもかかわらず、ブレスレットのように浮かび上がる模様があるのが分かった。
その時、紫姫の首にも薔薇の模様が浮かび上がる。
志麻はゆっくりゆっくりと近づいてきた。
「契約内容確認。
一つ、これは2人を繋ぐ見えない絆の糸、愛の印となり、
一つ、
一つ、
紫姫は弱々しく立ち上がり、エルドの向こう側にいる彼を見つめていた。
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時