17話 ページ24
「……。」
「……。」
2人は起きてから、話が何もない。
紗奈は別に何も話したいとは思わないが、この話さない空気も嫌いだった。
「ねぇ、センラは、何で警察官になったの?」
なんとなく出た言葉だった。
紗奈はまた付け足すように言った。
「…折原家ってさ、この国の中でも名家の一つなのに。警察官になる必要あったの?
…あ、お姉様がいたか。
それでもさぁ…、政略結婚で他の名家と結婚させるとか…。
今のこの年齢だったらもう許婚とかいるんじゃない?」
センラは気まずそうにあー、と声を出した。
「俺は政略結婚が嫌やった。
紗奈やって、好きでもない人と結婚するのは嫌やろ?やから、当主の座を姉上に譲ったし、必死で勉強して、特別警察官にもなったんよ。
でもな、父上から18歳までに相手を見つけなければ、こちらで相手を見つけさせてもらう…って言われてなぁ〜…。」
「うわ、大変〜。」
「絶対思ってないやろ」
「分かっちゃった?」
紗奈はクスクスと笑い、なら、と言いかけた。
「私がセンラの許嫁になろうか?」
もちろん冗談のつもりで。
すると、だんだんセンラの顔が赤く染まっていく。
紗奈はそんなセンラを見ていると少し自分が恥ずかしくなった。
「や、冗談だよ!まさかぁ〜、そんなわけないでしょ?
センラ、もしかして本気にした?」
紗奈は手をぶんぶん振って否定した。
センラは紗奈の長い髪を掬い、口付ける。
「本気にした。
ならへん?俺の
今度は紗奈が顔を赤くする番だった。
もうセンラは顔色が普通に戻っていた。
そして紗奈の額にデコピンを食らわせる。
「なーんて、な。仕返し。」
「はぁ?」
「照れたやろ?」
「全然!」
すると、センラは紗奈の頬に手を添える。
「嘘つくなや、顔とっても赤いで?」
センラと目が合い、不意にもキュンとしてしまう。
紗奈はすぐに目を逸らし、今のは感じなかったことにする。
悔しい。照れた。
かっこいいって思っちゃったし、センラならいいかも、なんて…。
「ちょっと…照れたし…本気…にした、かも。」
紗奈は目が合わせられなかった。
恥ずかしいし、またあの気持ちになったら…。
とうとう、センラのことが好きになりそうで紗奈は怖かった。
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フィリア…吸血鬼が人間に対して使う言葉。
婚約者や妻、愛する人という意味がある。
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時