14話 ページ20
「ぅ〜ん…。⁉」
目を開けると目の前にはセンラの顔が。
声が出そうなのを紗奈は手を押さえて堪えた。
血が出ていた頭も、腫れていた腕も、無かったかのように綺麗に治っていた。
『本当に吸血鬼って傷が治るの早いんだ…」
思わず手を伸ばし、傷ができていた頭の部分に触れる。
改めてサラサラしているなぁ、と感じていたが、はっと我に返り、「私、今結構やばいことをしているのでは…?」と手を引っ込めようとした瞬間、何かが私の手をつかんだ。
「紗奈?」
センラが少し目を開けて微笑んでいる。
紗奈は顔を赤くした。
「お、きてたの…?」
「ずーっとな。」
ふふっ、とセンラは笑って、紗奈の腕を離して頭を撫でた。
そして、申し訳なさそうな顔をする。
「ごめん…。酷いこと言って…」
一瞬沈黙が走ったが、紗奈がその沈黙を破った。
「許したくない…って言いたいところだけど謝ってくれたし…。許すよ。」
さっきの出来事を思い出すとともに、幼い頃の出来事が、脳裏に浮かんで紗奈の心を蝕む。
「あんなこと、言われ慣れてる…から…」
紗奈の目の前が歪み始めて、目の前がよく見えない。
センラが起き上がり、それを見た紗奈も起き上がる。
「昔、何があったん?」
センラは隣に座り背中をさすった。
ゆっくりと、紗奈は話始めた。
*・゜゚・*:.。..。.:*・'・゜゚・*'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「こいつが、あの男と女の子供か?」
目の前に立つ男が少女の顎を掴み、上に向かせる。
少女の瞳は不安と恐怖に怯えていた。
少女の顔は青白く、服もボロボロ、髪も手入れしたら綺麗だろうに…と思う金髪だった。
「はい。その通りです。ご主人様」
少女の隣にいた、目の前に立つ男の家来が主人に頭を下げた。
「あの女は世界的にもおいしいと有名な名家の人間です。そして父親のほうはこちらも上質な血を持つ人間です。
……血の質は上質であると思われます。」
目の前にいた男はまじまじと少女を見つめた後、少女の顎を離し、腕を思いっきりつかんで歩かせた。
「来い。」
少女に光は無かった。
これからこの男に一生を捧げなければならないのだ。
心も体も、血も。
少女はそれを幼いながらに全てわかっていた。
そして自分がこの地獄から出られないことも。
「良いか?お前は
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時