12話 ページ18
「え…さ?」
ニコ、と笑いかけるセンラはいつものセンラじゃない、と紗奈は恐怖に怯えた。
いや、もしかしたら私と出会ってからのセンラが偽物なのかもしれない。
これが本当の…センラの姿…?
「ここから出たら紗奈(餌)を手放さなきゃいけなくなるやろ?
ま、もちろん契約は外す気ないで?」
センラの目は獲物を捕らえた獣のようだった。
「やだ…せ、んら…こわいよ…、いつものセンラじゃ…ない…」
『お前は…一生涯俺の餌なんだよ。』
紗奈の記憶と今のセンラの言葉が重なった。
「やだ、いやぁぁぁ!」
紗奈は顔を手に隠すように埋めた。
パリン、と机にあったプラスチックのコップが割れる。
そして…
「い"って"…!」
皿がセンラの頭に命中した。
だが、それだけではなかった。
皿が紗奈目掛けて飛んできたのをセンラは見逃さなかった。
*・゜゚・*:.。..。.:* ・゜゚・*・':.。. .。.:*・゜゚・*
紗奈がしっかり意識を取り戻すと、破片が飛び散っていた。
そして、ベッドの上にはセンラが横たわっていた。
頭から血を出して。
「センラ…⁉」
先程の恐怖など吹き飛んでしまった。
「センラ!大丈夫?血が…」
センラはゆっくりと目を開け、紗奈を見る。
その声はか細かった。
「紗奈…。」
「ごめん、勝手に念動力使っちゃって…!」
「大丈夫やって…吸血鬼は…人より、回復力高い…から…」
確かにじわりと血が戻っているし、声量も聞こえるくらいになっている。
そうだ、紗奈は朧げに覚えていることを思い出す。
センラが、飛んできた皿から自分を守ってくれていた。
「紗奈、ごめんな。……おやすみ。」
「え、」
また意識が遠のいていく___。
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時