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11話 ページ17

「…本当にやるん?」

戸惑うようなセンラの声に「は?」と紗奈は言い出しそうだったが飲み込んだ。

「やるよ?私ここから出られないし。
ここから出て、まだやりたいことがたくさんあるんだからね。こんなところで死ぬわけにはいかないの。」

紗奈首を背後に向け様子を伺うと、センラは悲しそうな目をしていた。

なんでそんな目をしてるの…?

目線を真っ正面にむけ、決意するように、そしてセンラに聞こえるくらいの音量で、紗奈はつぶやく。

「センラが何を企んでるのかは分からないけど…、私はここから出たい。
この作戦は必ず成功させる。必ず…。」

紗奈には早くここから出たい理由があった。

「…知ってるよね。
一昔前に世間を騒がせた怪盗、『オールジュエリー』。」

「もちろん知ってるで。
宝石しか盗まない…っていう、まさに紗奈達みたいな…。」

少し溜息をついて紗奈は話し出す。

「それが私達の親代わりの人。私は姉さんって呼んでた。」

「…⁉ 紗奈は…じゃあ…本当の親は居ないん?」

「…まぁ、ね。
いるにはいる…けど、会話すらしたことない。
最後に1回話して終わっちゃった。」

首をすくめ、少し笑いかけた。
少し重だるいこんな空気は1番嫌いだった。

「姉さんには夢があった。
その夢は叶わないまま…姉さんは失踪して、死んでしまった。
…その夢を私達は叶えたいんだよ。」

そう、だから姉さんが嫌がっていた怪盗に紗奈はなった。

敵にこんな話をするのはどうかと思ったが、もう手遅れ。仕方ない。

しかしセンラは…

「俺は出たないわぁ」

急に予想外の反応が来て驚いた。

え、今…出たくないって…。

「どうしてっ⁉ 前、出たいって…」
「…見つけたんよ、やっと…俺の美味しい餌を。」
「え?」

体を振り返らせれば、センラから少し離れられ、足をベッドにのせる。
迫るようにセンラに紗奈は聞いた。

「吸血鬼は…普段から人間とかの血を飲んでるわけやない。
特別な栄養剤でできた、人工血。
すっごい不味いんよ。

しかも、人間の血なんて不味い奴も居ればうまい奴もいる…。
初めてなんよ。

こんな美味しい血の人間…」

センラは紗奈のさっき噛み付いた首筋を人差し指でなぞる。

その言葉を紗奈は恐怖に染まった目を向けて聞いていた。
『話しかけてきたのも、全部…私から血を貰う為…?』

「一生離さないで…?俺の、俺だけの餌を」






___________________


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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時

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