魔法と怪盗は甘くて酸っぱくて苦い【snr】 (ページ12)

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6話ページ12

紗奈の震えが止まり、さっきよりも彼女の呼吸を感じるようになった。

「…紗奈？」

しばらくして紗奈の顔を覗けば、すやすやと眠っていた。
ガスや契約で眠らせた時、体の意識と反した行動をしていたからか、疲れは取れなかったらしい。

センラは紗奈をそのままベッドに寝かせようと思ったのだが、紗奈の手は、自分の腕を握っていた。センラの腕に絡みつく紗奈の腕を抜け出すために、ゆっくりと手を引く。

ベッドに寝かせ、紗奈のサラサラの髪を掬った。

「紗奈…結構、近くで見たら可愛いんやな。
…おやすみ。」

何故かは分からなかったがその後、紗奈額にキスを落とした。センラは我に帰り、はっとした。
センラの顔に熱が集まるのがわかった。

「(俺なんでこんなことしたんやぁ…//)」

吸血で唇が触れた時は…何も思わなかったのに。

分からないが心臓もばくばく鳴っている。

吸血鬼はこの世界では珍しい。
運動能力も高く、頭も良いのが吸血鬼だ。
もちろんそれならばモテるに決まっている。

実際、センラの周りの女子は全員媚を売ってきた。
だからこそ、言い寄ってこない女…それどころか、敵対視するような目を向ける紗奈に興味が出たのだ。

そう…敵だ…。
俺はこいつを…紗奈を捕まえ無くてはならない。

捕まえなければ…いけないはずなのに…。

心のどこかで…捕まえたくないと思ってしまう自分がいることにセンラは戸惑いを感じた。

その感情が心の中で交差する。

「なんでこんなに…苦しいんやろ…。」

うずくまり、顔を腕で隠す。

複雑で。苦しくて。こんな感情初めてで。

痛くてもどかしくて堪らない。

神様は酷い…

敵に対してこんな感情を抱かせるなんて。

「紗奈…苦しいんよ…。」

そして床に座ったまま、センラは眠りに落ちた。