3話*嵩画 ページ4
時の国務大臣の面面が長机を挟んで左右にずらりと並んだ、小さな薄暗い会議室。彼らはその目に畏怖ともとれる感情を映しながら、机の先に立つ二人の男を凝視していた。
一人は国民であれば誰もが見知った内閣総理大臣。そして彼と静かに向き合うのは、特にこれといった特徴のない平凡そうな男。新調したてのスーツに身を包みにこやかな表情を浮かべて立つ彼は、やがて室内に充満する沈黙を破った。
「突然お邪魔して申し訳ありません、総理。国務大臣の方々。少々お話ししたい事がございまして。…まあ、私も"呼ばれた"身ではあるのですが」
その言葉に国務大臣達は息を飲んで俯く。
言葉は、出ない。その様子を眺めたのち、彼はこほん、と一つ咳払いをした。
「…私達土地神は、その昔、豊葦原瑞穂の国であった時代から、姿形こそは変えど、その地を見守り続け、時には手を貸し、人々を助けて来た存在です。飛鳥、鎌倉、安土桃山、江戸、昭和。…そしてそれは今も、しかり。…しかし」
一つ間を置いて、神妙な面持ちで男は続ける。
「太平洋の惨禍を、国務大臣とあろう方々が知らないはずはないですよね。私達の身体や存在は、その地の状態と連動している部分が多い。
あの戦争で殆どの土地神が傷を負い、力を失ったのです。
…それは私も同じ。力を失った私達は、復興を目指す国民の心意気を信頼して、一度長い眠りに付いてそれを養う必要がありました。貴方方のお爺様辺りから聞いているのではないでしょうか。…土地神が姿を消した、と。
ああ、まあ墨田なんかは眠らずにずっと居ましたっけね。大分ローカルな存在ではあると思いますが、ご存知でしょう。」
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メロンパンのメロンパン(プロフ) - MISAKI#さん» ありがとうございます!こちらは神様の戯れ。という企画の合作となっております。もしよろしければご参加ください! (2020年2月24日 12時) (レス) id: 9329d1e699 (このIDを非表示/違反報告)
MISAKI#(プロフ) - 題名見て面白そうだったので来ました!設定好きです…! (2020年2月24日 11時) (レス) id: 5900aac5bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:メロンパンのメロンパン x他5人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2020年1月9日 16時