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「Aは俺にとって大切な存在だから。でも、俺じゃ傷付けちゃうばっかりなんです。自分勝手なのは分かってるんです。俺があいつの心に穴開けたんです。だから凌さん、Aを助けてくれませんか?」
驚いた顔で俺を見る。
そりゃそうだ。シンプルに言ってる意味が分からない。
精一杯に頭を下げる俺を見て凌さんは腹を抱えて笑っていた。
『俺さ、お前の事ライバルだと思ってたわ。』
「...へ?」
『なんかよくわかんねえけど、あいつは俺にとっても特別だから。』
「それって...告白ですか?!」
『お前にじゃねぇよ?』
「分かってますよ!笑」
『俺もAに救われた。だからAを救ってやりたい。今俺に出来ることは、アイツの背中を押してやることだと思ってる。だから今はそういう感情は持たない。』
あぁ、どこまでカッコイイんだこの男は...。
俺でも惚れてしまいそう...。
「凌さん...俺好きっス...。」
『お前気持ちわりぃ』
「あいつ、弱いくせにすげー強がるから。心配なんです。」
『あぁ。』
「今もやりたいこと出来たって言ってたけど、また自分を追い詰めるかもしれない。付き合ってた頃、両親が亡くなった後から、虚無感に襲われたようにボーッとしたり、投げやりで消極的になる事がたまにあったんです。それに追い討ちかけてたのは俺もかもしれないけど。」
『親の話はAから聞いた。まぁ、しんどいけど自分の気持ちにケジメつけて、ちゃんと向き合うために音楽をやるってな。』
「そうですか。俺、あいつが歌ってるの大好きで。俺は凌さんみたいに人に教える術も無いし、なんの助けにもなれないから、ただ邪魔しないように、少しでもいいから。俺も背中を押してやりたいんです。お願いします。Aに凌さんやAの親父さんが見てたモン、見せてやってください。」
『あぁ。修司に言われなくたって、俺がアイツをちゃんと連れてくつもりだよ。』
「俺、応援してます、2人とも。」
『このことは、俺たちだけの秘密な。』
了解の意味を込めて
カチンっとグラスを合わせた。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時