元天才子役と二番星 ページ9
「貴方達、星野アクアと星野翡翠!?」
『・・・トトロ』
私が思ったことを素直に小声で言うと、聞こえていたのかルビーが吹いた。だって本当にトトロのノリじゃないか。
「誰だっけ」
「あっ、あれじゃない?重曹を舐める天才子役」
『十秒で泣ける天才子役でしょ。・・・あぁ、あの時の・・・有馬かなか』
昔、映画の撮影で共演したな。
「ここの芸能科だったのか」
有馬かなは私とアクアの肩に手を置き、安堵したように息を吐く。
「よかった、ずっと辞めちゃったのかと・・・やっと会えた・・・」
そんなに、会いたかったのか。あの時はボロ泣きしてたけど・・・まさか復讐とか・・・?
脳裏に、あの時泣かせた恨み!と物凄い形相で迫ってくる有馬かなが浮かんだ。いや、流石にそんなことはないか・・・ないと信じよう。
「入るの?うちの芸能科、入るの?」
「いや、一般科受けた」
「何でよ!?」
予想外すぎる、と言いたげな有馬かな。逆に何故こいつが芸能科受けると思ったんだ・・・?
「うちの妹が芸能科受けて、心配だからここ受けただけ」
「はぁ!?」
「うちの兄、シスコンなの」
『それも重度の』
「キッモ!じゃあ翡翠は?翡翠も一般科?」
『私は一応芸能科だけど、マネジメント目的だから』
有馬かなは一瞬嬉しそうな顔をしたものの、直ぐに落胆した顔をする。なんか、ごめんね。
そんな有馬かなを見てルビーが耳打ちしてきた。
「私、この人昔から好きじゃないのよね」
「でも受かったら後輩になるんだぞ」
『有馬先輩だよ』
「ん〜、そっかぁ」
「聞こえてんぞ・・・」
ルビーは残念そうな様子を隠すことなく、仲良くしましょー、ロリ先輩、と言った。喧嘩売りに行かないの。例え昔アイを侮辱されたとはいえ。そして有馬先輩もそれを買おうとしない。
監督の所へ行こうとするアクアに、有馬先輩はついて行った。何故か私も引き連れて。
「ねぇ、ねえって!」
前を歩くアクアの背中に有馬先輩が呼び掛ける。
「どこ行くの?監督って誰のこと?」
アクアは何も答えない。
「ねぇ、今どの辺に住んでるの?聞いてる?ねぇってば」
アクアが立ち止まり、此方を振り向いた。
「あんたどこ中!?」
「ヤンキー女子?」
『不良が絡んでくる時のそれだよ』
「いつまで着いてくるんだよ」
アクアがうんざりしたような口振りで言った。
104人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Wolf @ 元フェアリー | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年1月21日 23時