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太宰の云わんとするところは、何となく判った。
私達はよく、何かから逃げるようにこの酒場に集まる。
そして意思疎通とは名ばかりの、意味のないやりとりを深夜まで交わす。
何故か私達はこの酒場でよく顔を合わせた。
同じ組織とは云え、太宰は幹部、安吾は情報員、そして私は肩書きもない最下級構成員だ。
本来であれば酒を酌み交わすどころか、お互いの名前すら知らなくても不思議はない。
だがこうして立場も年齢も関係なく、私達はお互いの言葉に耳をを傾けている。
おそらく立場があまりに離れているおかげだろう。
「そう云えば」
太宰が空中の何もない場所を見つめながら、ふと呟いた。
「私達三人が此処で飲むようになって久しいけど、Aの仕事の愚痴ってあまり聞かないなあ。
そこもいいけど」
「……僕や太宰君と違って、Aさんの業務は少し特殊ですから」
「特殊な訳ではない」
私は首を振った。
「単に語る価値がないだけだ。
聞いても面白くない」
「まあたそうやって隠す。
そこもいいけd((…ゴホンゴホン。
……はっきり云って、この三人の中でAの仕事の話が一番面白いのだからね。
白状して貰おうか。
この一週間で、どんな仕事をした?」
私は少し考えて、指を折りながら答えた。
「マフィア傘下の商店街で起きた盗難事件の調査。
近所の小学生共が犯人だった。
それから拳銃を紛失したと云う系列組織のチンピラと、そいつの自宅を掃除。
炊飯釜の中で見つかった。
続いてフロント企業の役員が、愛人と妻に挟まれて修羅場だったのを仲裁。
あとはマフィア事務所の裏手で見つかった不発弾の処理」
「ねえA、真剣に頼むのだけど、私も一緒に仕事していい?」
太宰が目を輝かせながら身を乗り出した。
「無理だろう」
「だって不発弾だよ!
安吾、聞いた?
どうしてAばっかりそんな面白い仕事が回ってくるのさ?
不公平だ!
明日首領に、不発弾の処理もさせてもらえない幹部なんて辞めてやる、って直談判しよう!
Aと仕事もしたいし一石二鳥だね!」
他の幹部が聞いたら目を剥いて卒倒しそうな台詞だが、安吾はいつもの事と云う様子で
「そうですね」
と適当に肯いている。
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ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時