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「……取引は何時に終わったの?」

太宰が荷物を見ながら、ふと訊ねた。

「夜の八時です。
遊ぶ間もなくとんぼ返りですよ」

安吾は苦笑して云い、それから付け足した。

「まあ、給料分は働きました。
これで僕も頸を切られずに済みそうだ」

「ずいぶんと気弱だね、『マフィアの凡てを識る男』坂口安吾ともあろうものが」

太宰がにこやかに云った。


マフィア所属の情報員である安吾は、他組織と秘密情報をやりとりする情報の運び屋だ。

どの幹部派閥にも属さず、首領の命令で取引の日程、他組織との同盟、時には内通や離反、裏切りの斡旋など、重要で機密性の高い情報を運ぶ。

謂わば闇の密使だ。

組織の趨勢を決める重要情報は、ほとんどが安吾を介して首領の許へ届く。


当然、安吾を拷問して情報を吐かせれば、黄金よりも貴重なマフィアの情報が手に入る。

生半可な人間ではその大役を任せられない。

よった鉄線のようなタフさが必要だ。

「歴代最年少幹部に較べれば、僕の業績など学生の履歴書も同然ですよ。
ところで今日お二人がこの店に居るのは、何かの会合ですか?」

「どうだっけ、A?」

「いや」

私は太宰の代わりに答えた。

「何の予定でもない。
偶然ここに来たら太宰が居ただけだ」

そういう事はよくあるのだが。

「そう?
私は今夜ここに来たら、君達二人に会えるような気がしてね。
特にA♡
まあ、なんとなく来た」

太宰はそう云って、自分の発言を面白がるように微笑した。

「僕達に用事があったのですか?」

「別にないよ。
ただ、そうしたらいつもの夜になるかな、と思っただけさ。
それだけ」

そう云って太宰はグラスを爪で弾いた。


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ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時

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