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地下組織ポートマフィア幹部__太宰治
マフィア幹部などという肩書きを、少年とも見紛うような若造が名乗っているとなれば、事情を知らぬ人間には笑い話だろう。
だが、太宰が打ち立てた偉業のリスト_闇と血のリスト_を見れば、笑ってもいられなくなる。
ここ二年でポートマフィアが新たに得た利益のおよそ半分は、太宰の功績に依る。
その総額が何億になるのか、そのために踏み潰された命が何十人になるのか、一介の太鼓持ちである私には想像もつかない。
無論__代償のない栄光など存在しない。
「また傷が増えたな」
私は酒杯を舐めながら、太宰に巻かれた新たな包帯を指差した。
「増えたねえ」
太宰は自分の躰を眺めて嗤った。
太宰の躰には、その対価である傷がいくつも刻まれている。
要するに、怪我だらけなのだ、単純に。
太宰の躰は常にどこかが修理中だ。
太宰が生きて呼吸している場所が、暴力と死の中枢であるということを改めて思い知らされる。
「その脚の怪我の理由は?」
私は指差して尋ねた。
尋ねながら、おそらく酸鼻極まる殺し合いの結果なのだろう、と思った。
「『不意の怪我をしないために』っていう本を歩きながら読んでいたら、排水溝に落ちた」
以外と適当な理由だった。
「ではその腕の怪我は?」
「車で峠をぶっ飛ばしていて崖から落ちた」
「ではその額の包帯は」
「『豆腐の角で頭をぶつけて死ぬ』という自○法を試した」
「豆腐で怪我したのか?」
もしそうだとしたら、かなり絶望的なカルシウム不足だ。
「豆腐を堅くするため、独自の製法を編み出したのだよ。
塩で水分を抜いたり、重しを載せたり……自分の厨房でね。
おかけで釘を打てるほど堅くなったし、組織の誰よりも豆腐の製法に詳しくなった」
マフィア幹部が製法からこだわった豆腐作り。
やはり五大幹部ともなる男はやることの格が違った。
「その豆腐はうまいのか」
私は訊ねた。
「悔しいことに」
太宰は顔をしかめ、不本意そうな顔をした。
「薄く切って醤油で食べると、ものすごくおいしい」
「うまいのか……」
私は感心した。
太宰という男は、何をやらせても常人には届かぬ戦果を挙げてしまうものらしい。
「今度食べさせてくれ」
「Aさん……今のそれ、突っ込む所ですよ」
入口のほうから声がした。
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織田作之助
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ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時