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親指を口唇にあて、独り言を呟きながら周囲を歩き回る。
「取引現場を襲撃すると云う前情報は、態と流したのか。
それで戦力を一箇所に集め、武器庫を手薄にした。
そして武器を盗み出した__それも大量に。
何の為?
転売か?
否、それなら武器である必要はない。
成る程、これは__」
太宰はぶつぶつと沈思黙考に入った。
そうなると部下達は、黙って待つしかない。
「………………」
広津以下の部下は、自分より遥かに年下の幹部がじっと思考するのを、不動の姿勢で待っていた。
「なんかさ」
たっぷりと場を沈黙させてから、太宰は云った。
「喉渇くよね」
「何か購ってこさせます」
広津は傍らの部下に指で動くよう命じた。
構成員の一人が慌てて駆け出す。
「ミルク多めの珈琲。
うんと冷やして」
駆けていく黒服の背中に、太宰は明るく告げた。
「あ、でも氷は無しでね。
カフェイン抜きがあればそれがいいな。
砂糖は倍で頼むよ!」
冷や汗をかきながら指示を復唱しつつ去っていく黒服を見たまま、太宰はぽつりと云った。
「広津さん。
今回奴等が襲ったのは唯の武器庫じゃない。
ポートマフィアの非常用式装を保管する、三つの最高保管室のうちのひとつだ。
警備も厳重だし、許可のないものが近くに寄っただけで警報が鳴るようになっている。
敵はそれを易々と無効化し、しかも正規の暗証番号で中に侵入している。
この番号は準幹部級の人間しか知らない。
敵はどうやってそんな最高機密情報を手に入れたのだろうね?」
広津の表情がこわばった。
考えられるのは、内部の人間を拷問して吐かせたか、何らかの異能力で情報を抜き出したか、あるいはマフィア内に裏切り者の内通者が居るかだ。
どれが真実だとしても、導き出される結果は最悪だ。
「この一帯は会戦地になるよ」
太宰は楼閣の連なる都市のほうを見て、薄く笑った。
「そこら中で火柱があがる。
紅く焼け焦げた空が見えるようだ」
「敵組織の情報は判らぬのですか」
広津が感情を殺した声で訊ねた。
「うちの部下が、昨日の捕虜を拷問して情報を吐かせようとしたのだけど、巧くいかなかった。
一瞬の隙をついて、奥歯に仕込んだ毒を呷って自害したのだよ。
ただ一言聞き出せたのは、敵の組織の名前」
太宰は次の言葉が持つ意味を象徴するように、鋭い目で広津を見た。
普通の人間が見られれば、数日は悪夢に現れて魘されるに違いない、血と暴力の暴風を予感させる目。
「__"ミミック"」
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ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時