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太宰は続ける。
「百人長たる広津さんには二十人程度の部下が居る。
その部下から借りた銃か?
違う。
朝のこの時間帯、銃の必要な案件は無い。
取り上げたんだ。
何故か。
銃把に白い粉と僅かに血痕。
でも広津さんには粉も血痕もついてない。
部下が麻薬絡みで騒ぎを起こしたんでしょう。
広津さんの目の隈からして、昨晩。
それで部下を縛り上げ、武器を取り上げた。
何をしでかすか判らないから」
「それは」
広津は押し殺した声で云った。
それを遮るように、太宰が続ける。
「その部下は組織方針を蔑ろにしているのだよ広津さん。
麻薬商売は利益も大きいけど面倒事も紐付きで連れてくる。
異能特務課、麻薬取締官、軍警の反社会組織監視班。
我々の失態を手ぐすね引いて持っている政府組織に絶好の口実を与える事になる。
銃を取り上げる程度じゃあ足りないよ」
「しかし……」
「広津さん。
私は何故か判らないけど幹部なんて神輿に担ぎ上げられてる。
幹部になれば厭でも部下が出来る。
でも不出来な連中を巧く使って成果を上げるなんて私の柄じゃあない。
だから私は、駄目な奴はさっさと切り捨てる事にしてるのさ。
その部下は処分すべきだよ」
「……申し訳御座いません」
絞り出すような声で広津は云った。
マフィアの世界で"処分"はすなわち死刑を意味する。
幹部級からの命令に従わなければ、叛逆と見做されて自らも同じ運命を辿る。
広津は謝罪したものの、次の言葉はない。
太宰は冷ややかな視線で広津を見詰める。
時間まで凍えたような沈黙。
「……なんてね!
冗談だよ」
太宰が突然明るい声で云った。
当惑した顔で広津が太宰を見る。
「部下を簡単に切り捨てない広津さんだから、部下が随いてくるのだろう。
任せるよ。
首領には黙っておくから」
笑って広津の肩を叩く。
広津は肯きながら、無意識に自分の喉をさすった。
筋肉がこわばっている。
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ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時