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7、かわいい子には旅をさせよ ページ7

××



中島先輩は物凄い勢いで茶漬けを食らっていた。五杯、六杯、七杯……次々とお椀が空になっていく。三十杯に到達するのも時間の問題だろう。国木田、という先輩の財布を心配しながらも私も唐揚げ定食を食べていた。


「おい太宰、早く仕事に戻るぞ。
仕事中に突然「良い川だね」とか云いながら飛び込む奴がいるか」


大幅に予定が遅れた、とぼやく国木田先輩を横目で見ながら太宰と名乗った軽薄そうな先輩は軽薄に笑った。二人のやり取りに耳を傾けながら、私も箸を動かしていく。このお店の唐揚げ定食は肉汁がたっぷりと詰まっていて美味しい。


「中島先輩、お裾分けです。あーん?」

「あんむと」


中島先輩の口に唐揚げを放り入れる。
太宰先輩が興味深そうに私達の様子を観察していた。


「君達はどういう関係なの?君は制服を着てるけど、そちらの彼は着ていない。つまりクラスメイトというわけではなさそうだし……先輩と呼んでいることは彼の方が歳上だろう?兄妹?幼馴染み?それとも……ねぇねぇ、どんな関係なの?」

「旅仲間です」


好奇心いっぱいの瞳を向けられ、つれなく答えた。望んでいた回答ではなかったのか、彼はつまらなそうな表情をする。


「あはは、旅仲間というか……なんというか。
僕は今まで孤児院にいて、Aちゃんと知り合ったのはつい数日前なんです」

「ふぅん……君、孤児院の出かい」

「出というか……追い出されたのです。
経営不振だとか事業縮小だとかで」


中島先輩は困ったように頬を掻く。
孤児院から追い出された、というのは存じていたが、改めて経緯を聞くと酷いものである。大人は無責任だとしみじみ思った。


「おい太宰。そんなことを聞いてどうする。
俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れぬ篤志家じゃない。仕事に戻るぞ」


深入りするなと云いたげに、国木田先輩は太宰先輩に視線を送る。お二人は何の仕事を?中島先輩が不思議そうに問う。


「なァに……探偵さ」


彼はキメ顔でそう云った。
探偵。たんてい。タンテイ。あまり聞き慣れない単語に私が小首を傾げていると国木田先輩が小さく舌打ちした。


「探偵と云っても猫探しや不貞調査ではない。
斬った張ったの荒事が専門だ。
……異能力集団、武装探偵社を知らんか?」


武装探偵社。
これまた聞き覚えのない会社名に私はまたもや首を傾げ、中島先輩を見た。何か知っているのか彼は目を見開き、二人を凝視していた。



**

8、薄暮の武装集団→←6、彼ノ名ハ、太宰治



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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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