16、帰り道は閉ざされた ページ16
××
「ここが社員寮。空きが一つしかないから、敦くんと二人で使ってね」
「はぁ……」
未だ社員になると決まったわけでもないのに、太宰先輩は私達が社員になると何故か確信しているようだった。太宰先輩が `武装探偵社´ なる社長ならこの態度も納得だが、国木田先輩達のクールな対応からしてそういう訳でもなさそうだ。この会社の社長さんが私と中島先輩を手放しで歓迎してくれるとは思えなかった。
賢治少年が中島先輩を蒲団に降ろす。
中島先輩は起きる気配もなく安らかな寝息を立てていた。
「それではAさんもお休みください!」
「ありがとうございます……そういえば、賢治少年はおいくつで?」
「十四です!」
「……じゅ、十四……?」
予想以上の幼さに衝撃を受けた。
十四、ってまだ中学生ではないか。
どんな事情があれども中学生が働くなど私の地元ではまず有り得ない。しかし異能力なんてものが存在しているくらいだし最早、ヨコハマでは何でも有りなのだろうか。
「じゃあ、私達はこれで行くよ。
Aちゃん、敦くんとあんなことやこんなことしちゃあ、“めっ“だからね!」
「どうぞお帰りください」
妙なことを云い出す太宰先輩をしっしと手を払いながら追い出し、しっかりと戸締まりをした。改めて部屋の中を見回すが中々良いところだ。多少古ぼけたところがあるものの、野宿よりかは大分マシだろう。
中島先輩の隣に敷かれた蒲団に座り、彼の横顔をじっと観察した。ざっくばらんに切られた白髪に未だあどけなく幼い寝顔。そんな彼があの虎と同一人物なんて。
「……不思議なものですねえ」
そして真逆、自分にも異能力なんてものがあるとは思わなかった。今まで田舎にいて異能力者なんてものに会うこともなく過ごしていたから異能の存在に気づくはずもなかった。
かえりたい。
情けなくも、私はそう思っていた。
祖父の云うことを聞いて、あの狭い田舎でずっと暮らしていれば。ああ、帰りたい。……まあ、そもそもお金が無いのだから帰れるわけがないのだが。お金を稼ぐ為には矢張り仕事に就くしかない。
「……お金が貯まるまでの辛抱、か」
そう思えば幾分かは楽になれる。
私は中島先輩の柔らかい髪を人撫でし、目を閉じる。
余程疲れていたのか、すぐに深い眠りに落ちた。
***
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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
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