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11、気づいてしまうな真実に ページ11

××



Aは目を閉じ、太宰の推理に耳を澄ませていた。

経営が傾いたからといって、擁護施設が児童を追放することはない。それに経営が傾いたからといって一人二人追放したところでどうにもならない。

中島敦が街に来たのが二週間前。
虎が街に現れたのも二週間前。


「君が鶴見川べりにいたのが四日前。
同じ場所で虎が目撃されたのも四日前」


敦の身体に異変が起きていく。
太宰が言葉を紡ぐ度に、敦の身体は人間からかけ離れたものになっていく。Aは瞳を開ける。世界がもう一度、色づいた。


「国木田くんが云っていただろう。
武装探偵社は異能の力を持つ輩の寄り合いだと。
港間には知られていないが、この世には異能の者が少なからずいる」


中島敦は虎人間などではなく、 `異能力者´ だったのだ。点と点が繋がっていく感覚。太宰の推理は正しかった。しかし、太宰のその推理に耳を傾けている者はAしかいなかった。



「その力で成功する者もいれば、
力を制御出来ず身を滅ぼす者もいる」



敦は叫んだ。それは人間の叫び声ではない。
太宰はAに隠れるように目で合図する。

Aは近くの物陰に身を隠す。


「君も異能の者だ。
現身に飢獣を降ろす、月下の能力者」



太宰の瞳には一匹の虎が映っていた。
虎は牙を降ろす。太宰は軽々とそれを交わしていく。その身軽さはさながらワルツを踊っているかの如く、華麗で気品があった。


「獣に食い殺される最期というのも中々悪くはないが、君では私を殺せない」


太宰が虎に手を伸ばした瞬間、Aが僅かに物陰から顔を出した。


 刹那、虎の動きが停止する。


虎が振り向く。Aを捉える。

異変に気づいた太宰はもう一度虎に触れようと手を伸ばすが、虚しくもその手は宙を切っただけだった。虎はAに駆け寄っていく。


 これは、まずい。

 
予想外の非常事態に太宰は逃げろと声を張り上げる。しかし、Aは虎を見つめ、一切動じなかった。

余裕があるわけではない。動けなかった。

初めて虎と遭遇した時、虎はAを攻撃することはなかった。もし、Aの推測が正しければ。


 この虎は、七竈Aに攻撃出来ない。


 祈るしかない。
 この可能性に、賭けるしかなかった。



**

12、その少女、魅惑につき→←10、月下の異能力者



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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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