キラハグ ２

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「だって私は彼氏がいるわけでも結婚してるわけでもないんだもん。
陽之介……、じゃなくて、太輔先生とどうなったってひろには関係ないじゃんっ」


「・・・」







もうこうなってしまうと
自分でも自分が止められない。









「"俺の"だなんてそんな簡単に言わないでよっ！
私は先生のアシスタントだけど、ひろのものではないっ」









せっかく嬉しかったその言葉も
裏を返せばきっと残酷な言葉。

私が太輔先生と一緒になったら
ヒカリの面倒を見る人がいなくなって困る、とか
アシスタントが減って困る、とか
そういう意味しか持ってないと思うと
胸が苦しくなる。







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「………そうかよ。」









一瞬顔が歪んで、傷ついてるような顔になったのを
私は見逃せなかった。









「ひろ………？」









「よーし、帰るか。
芦田さんにケーキ買ってこ、何がいいか分かんねぇからA選んでよ」









急にケロッといつも通りに戻ったテンション。

どこで買ってく？って
今度は私の隣を歩いてくれながら。








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「ねぇっ、さっきの話っ」









せっかく話題を変えたひろを無視して
腕にしがみついて、無理に足を止めさせ話をぶり返す。
とんだ空気の読めない女だな、って思うけど
どうしてもこのままじゃ、さっきのひろの顔が頭から離れなくてケーキどころじゃない。








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「…………Aの言う通り。」



「え？」









賑やかな街の中でのそのボソボソとした小さな声は
耳を澄まさなければ聞こえないレベルで
距離を縮めて耳を寄せた。









「ただのアシスタントなのに、"俺の"呼わばりして誤解招いて悪かったな。
確かにお前の言う通り、藤ヶ谷とどうなろうが俺には関係ねぇよ」









"ただのアシスタント"。

事実なはずのその言葉が胸に突き刺さった。





そんなことを言われたいわけじゃなかった。

突き放すように太輔先生とどうにかなってもいい、って言われたいわけじゃない。








本当は………………、









「うん……………。」









アシスタントじゃなくて、ベビーシッターでもなくて

一人の女として見てもらいたかった。

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