キラハグ ２

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「あの………っ、」






目を開けた瞬間に唇に何かが触れたけど
太輔さんの顔は間近にはなくて、






「……………あれ？」







人差し指が私の下唇に触れてるだけだった。








「残念でした、指でした〜」


「え？」


「ふふ、期待した？」






いつものように、私の好きな喉仏を震わせながら笑ってるけど
どこか悲しそうに見えるのは気のせい……？

目がふにゃふにゃって
自分で言うのもなんだけど、私のことを愛しそうに笑ってくれてるあの笑顔じゃない。







「太輔さん………？」


「俺はさ、無理やりキスするのは好きじゃないよ」


「え、うん………、でも、」


「今Aが目を閉じた時
思い浮かべたのは俺じゃないよね？」







………気付かれてる。

言葉を失ってしまって分かりやすい私に
今度は親指で優しく唇をなぞってくる。

それがくすぐったくて太輔さんを見上げると
ゆっくり顔が近付いてきて
目を閉じるタイミングもなく、唇が重なった。







「…………とか言って、結局しちゃったけど」







眉を上げておどけて見せてる。

あれ、私いま太輔さんとキスした……。






「このキスは、今までの宿泊分ね」


「え？」


「北山んとこに帰りなよ。
解放してあげるから、素直になって」






きっと北山も待ってる、って。

ていうか、そもそも解放ってなに？
私は別に太輔さんに無理やり閉じ込められてたわけじゃないし
なんなら私が、私の優柔不断さで
太輔さんを縛ってただけなのに。







「違いますっ、私は太輔さんに救われてっ」


「うん、俺はあくまでも救うだけ。
結果的に必要としてるのは北山でしょ？
求めてるのは俺じゃないでしょ？」







ひとつひとつ、全て私の本心をついてくる。

見えないようにして隠していた
本当の気持ち。

きっと太輔さんには全て見透かされてて
それでも見ないようにして優しくしてくれてた。




気付けば頬にあたたかいものが流れてて
そこで初めて自分が泣いてるんだって気付かされた。

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