キラハグ ２

９１ 藤ヶ谷side ページ42

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「俺もそろそろ帰るわ、ヒカリ待ってるし」


「あぁ、一緒にタクシー乗ってく？」


「いや平気、ちょっと歩きたいし」







そして立ち上がった北山は
一度Aに視線をやって、そのまま目を伏せた。






「じゃ、Aのことよろしくな」







酔ってんのをいいことに襲うんじゃねぇぞ、って
さっき一瞬見せた苦しそうな表情を隠すようにおどけて見せる。








「大丈夫、俺はそんな趣味ないから」








その言葉に、ふって笑うと
他の奴らにも挨拶をして俺らよりも先に店を出ていってしまった。

残されたAを見ると
まだ気持ちよさそうにスヤスヤと眠ってて
その頬に触れて声をかけた。




お酒のせいかいつもより熱い。

一緒に住んで、手は出してないものの
何度かこうして触れることはある。

その度にそのまま俺のものにしてしまいたくなるけど
触れた瞬間に見せるなんとも言えないAの表情に
何度も胸が締め付けられた。








「A、起きて。
もうすぐタクシー来るから外に出よう」


「ん〜……………、」






むにゃむにゃしながら微かに開いた瞳。







「大丈夫？歩けそう？」


「………………ひろは？」








ほら。

すぐにAが気にするのは北山のこと。

目の前にいるのは俺だっていうのに
Aの心はいつだって北山を探してる。








「今帰ったよ、ヒカリちゃんが待ってるからって」


「そっか……、そうだよね……」







お酒が入ってるし寝起きだからか
俺を気にする余裕がなくなってて
ひたすらに北山のことだけ。

ボーッとさっきまで北山が座ってた席を見つめるAの手を引いて
俺も皆に挨拶をすませて店をあとにした。







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「○○までお願いします」





タクシーに乗り込んで行き先を告げると
小さくラジオを流しながら走り出す。

引いたままだった手はそのままに
ギュッと指を絡ませるように握り直した。






そんな俺を見てAはまた切なげに笑う。





泣きそうなその顔を暗闇で見えなかったことにして
強く強くこの手が離れてしまわないように。

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