キラハグ ２

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「終わったぞ〜」


「ありがとう」






意外にも早く終わってくれたひろの茶碗洗い。

もうちょっと時間かけてくれても良かったのに…、なんて思ってしまうのは
やっぱりまだ気持ちの整理がつかないからかもしれない。








「んで？話って何？」


「…………うん、」








歯切れ悪くなかなか切り出せない私から
ヒカリを抱き上げ、自分のあぐらの上へと乗せた。







「俺もさ、ちょっとAに話したいことっつーか、渡したいものっつーかあるからさ…」


「え？なに？」


「いや、Aから言ってよ」


「う…………ん………、」








ひろの話したいことも気になったけど
今ここで切り出さないと、ズルズル言えなくなる気がして
大きく息を吸い、覚悟を決めた。









「…………あのね、」


「うん？」








あぁ……、もうすでに泣きそう。

その顔と声が愛しくて
話す前から鼻の奥がツンと痛かった。








「今日……、紗彩さんが来たの…。」


「え………？」









一気にひろの瞳が揺れて
動揺しているのが分かった。

それでも涙が零れないうちに
言葉をひとつひとつ絞り出した。









「今までも何度か見かけてたんだけど
声をかけようとすると、逃げられちゃってて…。
ヒカリとひろのことが心配だったんだと思う。
それで今日、なんとか紗彩さんを引き止めて話をしたの」








何も言わず、ただ私の声に耳を傾けているだけ。









「もう一度、ひろとヒカリと…………、
やり直したいんだって…………」









改めて言葉にすると結構きつい。

声が震えてなかったか不安だったけど
それよりもひろのヒカリを抱きしめる腕に力が入ったのに気付いて
つられるように私まで唇を噛み締めた。









「んだよそれ………」


「ごめんね、勝手に家に上げたり話したりして………。
でも、咲彩さん泣いてたから……。」









私もひろもそれ以上何も言えなくて
心なしかヒカリも心配そうな顔をしているように見えた。

さっきまでのすき焼きの幸せ匂いが残る部屋なのに
まるでそれが遠い昔のように思えるくらい
ただただ私には絶望しかなかった。

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