キラハグ ２

５２ ページ3

.




「この前のさ、メールの返事考えてくれた？」








このお肉柔らかーい、っていうほんわか会話から一変
"ご飯行かない？"っていうあのメールの確信に触れられた。









「……あれ、本気だったんですか？」


「え、逆に冗談だと思ってたの？」







クスクスと喉仏を震わせて笑う姿を見ながら、







「だって、そんな何回も会ったことがあるわけでもないし
そんなに話したこともないですし…。」









ひろが言ってた"女癖が悪い"って言葉を思い出してた。









「だからこれから知りたいんだよ。
ちょっとAちゃんに興味があるから、色々と知りたいんだけど……ダメ？」









さっきまで余裕そうな笑みだったのに
急に子犬みたいに甘えるような喋り方。

思わず口にしてたお肉の付け合せのポテトを丸呑みした。









「だめ……、というか……///」


「とりあえず俺ね、本名は太輔っていうの。
だから名前で呼ぶとこから始めてみない？」









"たいすけ"。

陽之介先生っていう名前から、太輔って名前に変わるだけで
一気に先生という存在から、男っていう存在に意識しちゃう。









「いやいや、呼べないですよ！」


「なんで？」


「なんでって、逆になんでですか？！」


「だから、距離を縮めるために」


「距離を縮める……、な、なんで……」








もう何がなんだか、なにが分からないのかも分からない状態。

本当に女癖が悪くてこんなことなんて日常茶飯事なのか
北山先生のアシスタントだからって私をからかってるだけなのか



それとも……、







本気で口説かれてる………？









「なっ、ないないないっ」


「え？」


「あ、いや、ごめんなさい。
こっちの話です……」








不思議そうに首を傾げた陽之介先生に
誤魔化すようにまたお肉を口にした。

５３→←５１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す