34.〈旅の終わり〉 ページ35
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「………俺達が恋人同士になる時に最初に云ったこと、お前は覚えてるか」
ようやく中也が口を開いた。
Aは何も云わずに彼を見る。
しかし、直ぐに視線を逸らしてしまった。
髪の毛で隠れてその表情は見えない。
『………ごめんなさい。もう忘れちゃいました』
そう謝る彼女に、中也はふっと目を閉じ「そうか」と呟く。
そして一度帽子を被り直すと、外套を翻し踵を返した。
「…それじゃ、俺は行くぜ。
────じゃあな。
ひく、とAの白い喉が鳴った。
まるで他人に向けるみたいな声。
いや……もうこの場合、二人は他人になったのだろう。
『──………ッ、』
振り返ることなく路地に消えて行く中也の背中を見送ったAは、力無く地面にへたりこんだ。
唇を噛んで耐えたのに、堪えきれなかった涙が頬を伝う。
もう一人で泣いていたって、彼の人は飛んで来てくれない。
もう、あの優しい声も頭を撫でる手も、何もかも、感じることはできない。
もう───全て終わったのだ。
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奏翔 - とても面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2023年3月21日 20時) (レス) @page50 id: 49dd49021f (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2023年3月17日 10時) (レス) id: e237c48342 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます!( ;ᵕ; ) これからもお付き合い頂けると嬉しいです! (2023年2月3日 7時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ゚+。:.゚おぉ(*゚O゚ *)ぉぉ゚.:。+゚めっちゃ楽しみに待っていました٩(๑>∀<๑)۶更新ありがとうございます<(_ _*)>麦子さんの小説は大好きです。頑張ってください。これからも応援してます。 (2023年1月19日 0時) (レス) @page48 id: 6b9c5dcab8 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - Senaさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです…😭更新頑張ります! (2022年5月2日 1時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦子 | 作成日時:2018年4月28日 20時