アクアマリン

03.〈恋文作戦〉 ページ4

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「実に形而上的な問題です。何故男性は何時もあの型(タイプ)の女性に靡くのです？」





樋口さんが呆れた様に云う。


それは私も判る気がする。

清楚な女の子は男子が好むものだと昔から決まっているのだろうか。





「とは云え私は貴方を応援します人虎
女性は強く押し切られるを望むもの！心で当たりなさい。でもその前髪は…」





突然ベラベラと喋り出す樋口さんに私も敦くんも気圧される。

国木田さんは興味が無さそうだ。





「恋文を渡すのは彼ではないぞ」





と、突然私達の目の前に現れた人影があった。

国木田さんが「花袋」と声を上げる。





「我が恋の行方見届けぬ訳にはいくまい」

「何だ、恋文の主は貴方ですか
何と云うか……人虎に輪をかけて望み薄そうな方ですね」

『割とハッキリ云いますね』





…でも樋口さんの云う通りだと思った事は秘密だ。

ぼさぼさの髪に無精髭、足には下駄、何故か蒲団を羽織っている彼の第一印象は「冴えない男性」。





「何をう！想いの深さならば誰にも負けぬ！
第一貴君はポートマフィアだろう！この花袋 探偵社を辞したと雖も犯罪者と馴れ合う心算はない！」





くわっと熱く喋り出し指を差す田山さん。

でもその先は電柱だ。


…国木田さんに聞いた通り、本当に女性と話すの苦手なんだな。


そんな事をしていると、敦くんが「あ」と向こうを指差した。





「居た」

「何ィ！？」





同時に振り返る田山さんと樋口さん。

私も振り返ると其処には、大きな荷物を持ったあの撫子が。





「うおぁわぇ な、な、撫子じゃああ！」

「洗濯屋から出てきた！ではあれは先輩の衣類！？色々けしからん！」





捜し求めた撫子の姿に、一気に慌て出す二人。





「もはや恋文作戦など貴にならない！私が直接天誅を───！」

『え、ちょっと！？』





すると樋口さんが銃を取り出し、撫子へ向けた。

撫子は私達の騒ぐ声に気付いて此方を見ると、逃げる様に反対側に走り出す。





「おのれ逃すかっ！」





その後を追って樋口さんも走り出した。

何が何だか判らないけど、





『この状況……結構拙いんじゃ』

「……！」





田山さんが手を握り締める。

そして、決意した様にずっと羽織っていた蒲団を投げ出して走り出した。





「おい花袋！？」


『………、何だ、かっこいい所あるじゃない』





走り去る背中を見て、私は小さく微笑んだ。





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