28.〈私の決意〉 ページ29
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カツン、カツン…
硬い靴音が辺りに響く。
肩に掛けた外套を翻し、薄暗い路地を進む人影があった。
「………」
難しい顔をして足元を睨み続けているのは、ポートマフィア幹部の中原中也である。
彼は先程まで探偵社社長が入院する病院にて指示を出していたのだが…
「────よお。来たぜ」
と、中也の足が止まった。
目の前には開けた空き地が広がっている。
そしてその真ん中には、此方に背を向けて立つ一人の少女。
『……すみません。突然呼び出したりして』
振り向いた少女は綺麗な藍色の瞳をしていた。
そう、彼女に呼び出されて幹部の仕事を一時中断して急遽此方へ来たのだ。
「良いのか?お仲間と一緒じゃなくて。
今この場で俺がお前を捕まえて捕虜にするかもしれないぜ?」
『…そうですね。その可能性もあります』
そう微笑むAは、何時になく儚げだ。
空き地に差す日に照らされて、そのまま消えてしまうんじゃないかと思うくらい。
「はあ…ったく、お前に嘘吐いても無駄か。
安心しろ。誰も連れて来てねえよ。で?用件は何だ」
Aは中也に「一人で来て下さい」とは伝えていない。
中也からしたら探偵社側の人間を捕らえる絶好の機会なのだが、それをしなかったのは何か大事な話があると思ったからだ。
『…時間が無いので、簡潔に云いますね』
こうしている間にも、社長の福沢の身体はウイルスに蝕まれている。
一刻も早く救いたいが、その前にやっておかなければならない事がある。
そう思ってAは中也を呼んだ。
心臓を落ち着かせる様にゆっくり呼吸をする。
後ろで組んだ手にぎゅっと力を入れる。
そして、真っ直ぐ中也を見詰める。
『─────別れましょう。私達』
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奏翔 - とても面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2023年3月21日 20時) (レス) @page50 id: 49dd49021f (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2023年3月17日 10時) (レス) id: e237c48342 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます!( ;ᵕ; ) これからもお付き合い頂けると嬉しいです! (2023年2月3日 7時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ゚+。:.゚おぉ(*゚O゚ *)ぉぉ゚.:。+゚めっちゃ楽しみに待っていました٩(๑>∀<๑)۶更新ありがとうございます<(_ _*)>麦子さんの小説は大好きです。頑張ってください。これからも応援してます。 (2023年1月19日 0時) (レス) @page48 id: 6b9c5dcab8 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - Senaさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです…😭更新頑張ります! (2022年5月2日 1時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦子 | 作成日時:2018年4月28日 20時