アクアマリン

20.〈少女の願い〉 ページ21

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『……あ、また沢山煙草吸いましたね』





中也に抱き着いていたAがふと気付いた様に身体を離した。





「………不可抗力だ」

『ほう、理由をどうぞ』





バツが悪そうに目を逸らす中也。

Aはすっと目を細めて腕を組む。





「…仕事は終わんねえわ、部下は問題起こすわ、首領の命令は急だわ、眠いわイライラするわで限界だった」


『…………』





これでどうだ、と云わんばかりの中也に、Aは思わず黙り込んだ。

Aは何時も中也に禁煙を勧めているのだが、

一向にそれが達成されない理由は、若しかしたら彼の職業にあるのかもしれない。


…中間管理職も楽じゃないな。


Aはそっと心の中で合掌をした。





『……うん、取り敢えず同情はします』





目付きの悪さが三割増しになる理由も判る。

いろんな意味でブラックだこの組織。





「……ま、もう慣れたけどな。
そんじゃ風呂入って来るわ」

『(あ、逃げた)』





くるりと身を翻してベストを脱ぎ乍ら風呂場へと向かって行く中也。

Aの説教が始まる前に逃げておきたかったらしい。

Aは何か云いたげだったが、それも諦めて彼の背中を見送った。





『はあ…大丈夫かな彼の人…』





肺がどうかなる前に過労でどうかなりそうだ。

今度例のロリコン首領に会ったら殴っ…話をしておこう。


そう密かに心に決めるのだった。






『……あ』






ふと、料理へと戻ったAの目に、袋に入ったままのアレが入って来た。

…食後に出そうと思っていたが、今は何だか触るのでさえ躊躇う。

見詰めるだけで青白い顔が頭に浮かぶ。




──────大丈夫、だよね。


今はそう自分に云い聞かせる事しかできない。





『(私は……ただ幸せに過ごしたい)』





少女の願いは、神へと届くか。





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