【銀魂】今日も傘屋は騒がしい【坂田銀時】

31 ポジティブって平和 ページ32

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『…そうだね。 寂しくないって言ったら、嘘になるね』





視線を床に落とし、そう呟く。

いつもの姉貴からは想像もつかない、とてもか細い、弱々しい声だった。





『…一体今頃、何処ほっつき歩いてんだか』





仮にも妹の、先祖の店の危機だってのに。


苛立ちを交え、皮肉を込めたような姉貴の強い口調に返す言葉を失い、しばし黙りこんでいた。

きっとその言い方と相まって顔も強ばってるんだろう、と勝手に思い込み、ちらりと隣に目をやってみると。


見えたのは、角を生やし牙を向いた、まるで般若のような強面＿＿＿
などではなく。





『…もう昔のアイツなんて何処にも居ないんだろうね』





悔しそうにそう吐き捨てた彼女の目には、涙が浮かんでいた。


こんならしくない姉貴を見ていたら、こちらまで負の感情が湧き出てきそうだ。

普段の姉貴のポジティブオーラがどれほど平和な事なのかよく思い知ったところで、そろそろこのネガティブオーラから脱したいところ。





「……どうやら、店を救う前に店主の心をどん底から救ってやらなきゃならねーみてぇだな」





『……余計なお世話』





「そんな意地張ってねぇで、ここはメンタルヘルスの沖田様に任せときな」





それでも完全拒否モードな姉貴にはもうお構いなく、その余計なお世話とやらを焼いてみた。





「…たまには誰かに甘えとくってのも、アリなんじゃねーですか」





『…私、二十歳なんだけど。 もう立派な大人なんだけど』





「あんたが立派ならニートも人斬りも皆の憧れの的だ、阿呆な事抜かしてんじゃねぇ」





『人が感傷に浸ってる時に容赦ねぇんだけどコイツ！！』





若干ボケればすぐさまキレよくツッコミが返ってくる。
姉貴の目から潤みが引いたことに安心して、やっと一息つくことができた。

だが彼女の顔はいまいち不満そうなまま。





『…いい歳して誰かに甘えるったって、一体何処にこんな重たい感情受け止めてくれる奴がいんのさ？』





「…姉貴、いくらしばらく登場してないとはいえ、原作主人公の存在忘れちまうのはどうかと思いやすよ」





『………ほあ？』





遠回しに人名をあげると、姉貴は見事、ふ抜けた声と共に究極の間抜けヅラを決めた。

彼女の頭上に大量のクエスチョンマークが浮かんで見えてしまうほど、訳が分からないという顔だった。

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