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しばらく勉強に集中していた、静かなその空間を壊したのは、そういやさ、という光くんの一言だった。
顔を上げた赤葦先輩が、これみよがしにため息をついたのがわかって。
思わず笑いそうになるのをぐっ、とこらえる。
「…木兎さん、まだ20分です」
「いーじゃんちょっとくらい!
んで、Aはさ、今度の合同合宿来ねーの?」
『…合同合宿?』
「そう。梟谷学園グループでやるやつ。
この前の音駒も来るし、今年は宮城からも1校来るって黒尾が言ってたぞ」
関東に複数存在する梟谷学園グループでの合同合宿。
脳内に、この前見た、音駒高校の流れるように滑らかなレシーブが思い浮かぶ。
あらゆることを見透かすような主将の黒尾さん。
最小の動きから多彩な攻撃を仕掛けるセッターの金髪コヅメさん。
そして、綺麗な目をした、リベロの夜久さん。
木兎さん、と赤葦先輩が再度咎めるように声を出したのは聞こえていたけれど、内容が内容なだけに、完全に興味を奪われてしまった。
ごめんなさい、赤葦先輩。
『それって、毎年春高にかけて複数回やってるっていうやつ?』
「それ!ちょろっとでもいーからさ!な!?」
『…そりゃ行きたいけど、でも行っても邪魔になっちゃうんじゃ…』
「んなわけねーって!な!赤葦!」
勢いよく言い切って、そのまま赤葦先輩を見つめる。
その目は少年のようにキラキラしていて。
…本当に、どこから来るの、その自信。
もちろん、行けたら嬉しいけど。
でも部外者であるわたしが行けるようなものでもないことは百も承知だから。
こう言ってくれてる光くんには申し訳ないけど、自分から遠慮するように申し出ようか、と考えた時だった。
「…いいんじゃないですか」
『え』
「よっしゃあ!さっすが赤葦!!」
「いいと思いますけど、一応監督に確認しておきますね」
ノートから目を離さずに、淡々と言ってのけた赤葦先輩。
興奮気味な光くんに肩を掴まれてグラグラと揺らされながら、その相変わらずな姿を呆然と見つめる。
行っていいの?
本当に?
「つーことだからさ!A、楽しみにしてろよ!」
『え、あ…本当にいいの?』
「赤葦がいいっつってんだから、いいに決まってんじゃん!」
何その理論。
というか、主将は光くんなのでは…。
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さな(プロフ) - ごんすけさん» 嬉しすぎますありがとうございます!励みになります✨ (2022年12月18日 19時) (レス) @page25 id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ごんすけ(プロフ) - 大好きですありがとうございます(語彙力の消失) (2022年12月18日 16時) (レス) @page23 id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - りるるさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!今後も楽しんでいただけたら嬉しいです🧡 (2022年12月18日 15時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
りるる(プロフ) - 好きです‼︎💕 (2022年12月15日 16時) (レス) @page2 id: 6abbd94f19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2022年11月30日 21時