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ぐっ、と喉の奥で息が詰まる。
心臓の音がうるさい。


光くんのプレーを見た時と同じ。
光くんと赤葦先輩のセットを見た時と同じ。





でも、どこか心地いい。
頭と胸を覆っていたモヤモヤが晴れていく。





そうだ。
光くんが、どういう人か、なんて
わたしが一番知っている。




知っていたはずなのに、
一番近くで見てきてわかっていたはずなのに。





光くんは、いつも、どんな時だって先を見てる。




でも。

その瞬間の快感を、楽しさを、喜びを、
見落としたり、忘れたりする人じゃない。





いつだって全力だ。





わたしにだって、そう。


今日も、今までだって光くんがわたしを置いていったことなんかない。
先に中学に入った時も、高校に入った時も。




いつも、わたしを待っててくれた。





いつだって、光くんの横に、ちゃんといた。




どうしてこんな簡単なことに悩んでいたんだろう。
簡単で、単純だったのに。




ムズムズする。

久しぶりに晴れた気持ちで、
何だか無性に光くんに会いたくなった。






『赤葦先輩、わたし…!』

「大丈夫だから」






頭に感じるぬくもりと重み。

光くんじゃない。
男の人のあたたかさ。



ふと、この前の夜久さんが頭をよぎったけど、
よく思い出せなかった。




手が届く距離。
さっきより近いところにいる赤葦先輩は、
笑っていた。




光くんの横にいる時の、あの笑顔だった。






「木兎さん、心配してたよ。
まだ体育館にいると思う。行っておいで」

『っ、はい!』






数十分前に出たばかりの体育館。
そこに向かう足が、何だかとっても軽い。


あの場所に光くんがいる。
大好きなバレーをしてる、大好きな光くんがいる。



そう思うと、光くんに会いたい気持ちが加速する気がした。





いつもみたいに、自主練してるのかな。
一人だから、サーブ練習かな。

誰にも付き合ってもらえないって寂しがってるかな。
赤葦先輩もいない、って、拗ねてるかも。





そこまで考えて、完全浮かれた頭で、忘れちゃいけなかったことを思い出す。





足を止めて、振り返って。
まだそこにいてくれた先輩に、頬が緩んだ。






『赤葦先輩!』

「ん?」

『ありがとうございます!』






下げた頭を上げた時。
もう一度見えた、赤葦先輩の笑顔。



光くんが横にいないのに。
息が詰まるほどの、綺麗な笑顔だった。

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さな(プロフ) - ごんすけさん» 嬉しすぎますありがとうございます!励みになります✨ (2022年12月18日 19時) (レス) @page25 id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ごんすけ(プロフ) - 大好きですありがとうございます(語彙力の消失) (2022年12月18日 16時) (レス) @page23 id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - りるるさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!今後も楽しんでいただけたら嬉しいです🧡 (2022年12月18日 15時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
りるる(プロフ) - 好きです‼︎💕 (2022年12月15日 16時) (レス) @page2 id: 6abbd94f19 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さな | 作成日時:2022年11月30日 21時

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