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「重い、歩けない…」
「寝るなよ〜、夜通し酒呑めよ〜、僕メロンソーダ飲むから〜」
夜、永広が自宅に帰ろうとしている最中に、五条が肩から乗っかっていた。
全体重が永広にかかり、流石の怪力女も運べないようだった。
「私は酒で酔えないんだ、五条も知っているだろう?」
「知ってるよ、酒豪な事ぐらい。Aの事はなんでも知ってるよ」
「それはそれで個人情報が流出してるようにしか思えないのだが…」
永広が立ち止まり、空に浮かぶ月を見た。夜に特別な感情を持つのは、日本人としての感性なのか、それとも夜は悲しいのか。
肩甲骨辺りに頭をグリグリ押し付けてくる五条を止めようにも、きっと止めたら別のイタズラをしてくるのだろうと予想してあえて何もしないようにした。
すると、今度は首元に何かが当たりそうになる感覚。間一髪で術式を使う。
「…術式使うなよ。痛いからいいんだろ」
五条は永広の首筋に歯型をつけた。そして、不満げな顔で文句を言う。
「私は痛めつけられて興奮するような性癖を持っていないんだ。やるなら他の人にやってくれ」
「いいの?」
「……やっぱりダメだ。迷惑がかかるからな」
そんな返事を聞いて、五条は笑いを噛み締める。そして、意地悪そうに尋ねた。
「よく言うよ。僕が他の女抱く度嫌な顔する癖して」
「嫉妬深い女は、五条も嫌いだろう。それに則っての行動も、お前の為にならないか?」
「してよ嫉妬。ちゃんと演じていいよ、いや、本気になれよ。僕の為だなんて言うなら…」
「あぁ、五条の為だ。何度も言っているが、私を酷く愛したい人と、今すぐ誰かを好きになりたい人と、私が好きな人に私の身体を渡す。そのうちの1人に、五条が居るだけと思わなければならない」
大人びた顔で永広が自虐的に笑う。月明かりに照らされて、余計色気を助長していた。
「傑に悪いとかの言い訳はもう聞き飽きたよ。いい加減忘れて…」
「ヒーローは、亡き人の孤独を置いていったりしない。私が満足するまで、罪を償う」
これほど真っ直ぐで折れない芯は、現代社会、そして、呪術界において滅多に居ない。だからこそ五条は、永広のおかしなひねくれ方が愛おしくて仕方が無い。
しかしこれはどうも納得いかないのだと。
「これは両片思いって名義であってる?」
「そう思いたいなら思えばいい。満足する限り、肯定してやる」
「大層イケメンな言葉で、涙が出ちゃうよ」
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作成日時:2021年3月9日 0時