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「済まない、歩けなくなった」

「だろうね。だって落としたし」

「わざとなのか?」

「うん」


どうやら、私に痛覚が無いことを良いことに、行動不能にされたようだ。万事休す、こうなれば助けを呼ぶしかない。


「五条、私の右ポケットから携帯電話を出してくれないか。そう、そこだ。あるだろう?」

「男に尻触らせんのやめた方がいいと思うよ」

「そろそろ左腕も動かなくなってきて届かないんだ。頼む」

「ハイハイ。あ、スマホ、壊れてんじゃん。バキバキ」


拍子抜けするほどの悪運に唸る。これは困ったものだ。


「…ふむ、五条」

「何?」

「手を貸してくれ、家入のところまで行きたい」

「おっ、待ってましたぁ!任せなさい!」


まぁなんとも元気な奴だと思うよ。















高専に行き、家入に治療をしてもらった。その最中嫌な顔をされた。


「また派手に死んだね」

「死んでいない」

「死んでるよ、こんな状態なら」

「いいや。五条に高い所から落とされてしまったんだ。だから左腕以外は折れた」

「肋骨は」

「それは完治していないだけだな」


神妙な顔をして、額にデコピンをお見舞いされた。術式を解いていた為、少し痛い。


「ふむ、どこもかしこも治ったようだ。家入、ありがとう。任務に行ってくる」

「任務なら五条が行ったよ。代わりにね」

「そうか。なら報告書は」

「伊地知が担当」

「…次の任務は」

「明日」


虱潰しされるように予定が無くなっていく。だから五条の手はあまり借りたくなかったのだが、頼ってしまった自分の責任だろう。


「シャワーを浴びてこよう」

「風呂も浸かってこいよ」

「いや、今は忙し…くないんだったな。分かった、入ってくる」


言いかけた言葉は所詮今は使えぬ言い訳。家入の言う通りにした方が良さそうだ。

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作成日時:2021年3月9日 0時

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