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「おはよう」
「んぇ、あ、そう、おはよう」
変な声が出た。朝9時。五条が目を覚ますと、永広に挨拶された。
夜の事が嘘かのように、永広はいつも通りである。残るはずの縄の痕も無い。
言うならば、少し顔色が悪いぐらいだろうか。
「朝食を持ってきた。そこに置いていい?」
「…ん」
ぶっきらぼうに返事をする。首元を掻いて、「あー」と声を漏らして、それから聞いた。
「今日のオマエの予定は?」
「今日は…花を植えに行く。それがどうかした?」
聞き返されて、言葉が詰まるが、このまま永広を放っておいてはダメな気がして、「着いていきたいんだけど」と素っ気なく言った。
永広は、二つ返事で了承した。
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永広に連れて行かれたのは、小さな畑だった。
もう既にリアカーの上の用意された苗が花を咲かせており、永広は着くなり苗を持つ。
「これ、誰の手伝い?」
「…これは私の趣味」
これまた意外だった。こんな奴にも趣味はあるのかなどと驚いていると、「何…」とじっとりした目で見られる。
「んや、意外だと思って」
「……私も似合わない事ぐらい知ってる。でも、野菜以外も育てたいし…」
そう言った永広は、年相応の顔に見えた。
見ていてこっちまで恥ずかしくなって、話題を切り替える。
「何この派手な花」
「これはアスチルベ」
「ふーん」
別にこれくらいしか話せない。元から分かっていたが、それがだいぶ疲れる。
永広はもう既に作業に入り始めた。華奢な手からは想像つかぬほど力が強い。一つ一つ丁寧に植えていく様はなんだかんだ飽きなかった。
土に臆せず嫌がらず、ただ黙々と続けている永広は、ココ最近見た中で、1番生き生きとしている。しゃがんで頬杖をしている五条の事など見えていないかのように、ただただ作業を進めていた。
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作成日時:2021年3月9日 0時