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「はぁ?2日後に傑が来る?」
その日の夜。電話越しの話に、五条が聞き返した。
「そうだ。お前だけじゃ心配だからな。特に勧誘が」
「順調だよ順調。傑の手はいらない」
「…一応保険で送っておく。2日の間に解決出来るならそれでいい」
教師からの信頼がめちゃくちゃに無い事が再度確認でき、五条は舌打ちをする。日頃の行いのせいである事は分かっているのだが、夏油の方がスカウトが得意そうだと思っているのが気に食わない。
ブチッと電話を切り、ポケットにしまって外を見渡す。
月が輝いていた。田舎だからか、星も綺麗に見える。
そのせいか、なんだか心配になって、気づいたら走っていた。
屋敷の中は広く、目的の部屋がどこにあるかなんて分からない。
けれど、五条は何となく嫌な予感がして、ドタバタとしながら回った。
「ここじゃよ小僧」
不意に声が聞こえ、そちらを向いた。蓮川櫻子だった。
「貴重な体験をさせてやろう。ここの戸を開けるんだ」
言われるがままに、襖に手をつけた。ゆっくりと開けてみれば、夜に浮かぶ人影。
その人影は、宙にブラブラと揺れていた。
首にかかる縄が、夏の気持ち悪い暑さを助長している。
それは死体だった。間違いなく、永広Aの。
「……このクソババア…」
「まぁ見ておれ」
胸糞の悪さに殴りかかろうとしたが、止められる。もう一度永広の方を見れば、不思議な光景が広がっていた。
蝶が、死体に群がっているのだ。
そこで五条はやっと気づいた。これこそが永広Aの有する術式である事に。
今永広は仮死状態へと移っている。その間に術式で出てきた蝶の群れが身体を修復する。
身体が見えなくなる程にいる沢山の蝶。背景の月が見蕩れるほど美しかった。
痛覚のない彼女が、ゆっくりと苦しみを味わってこの世を去るはずの日。
彼女は今日も、自身の呪いによってそれを拒まれる。
でも、それでも、夜は綺麗だった。
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作成日時:2021年3月9日 0時