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「オマエ、いつからこんな村にいんの」
「7歳の時。両親が死んでから婆さまに引き取られた」
「ふーん。術式はいつから使えるようになったんだよ」
「分からない。婆さまに指摘されて初めて気づいた」
永広の、永広の術式は。
「そう言えば…なんで貴方、私に術式がある事を知っているの」
「俺は目がいいんだよ」
永広Aの術式は日常に紛れていて他が気づけなかったもの。
「オマエの術式は、痛覚麻痺と仮死状態を作るまでのセット。それと、そっからの反転術式。そりゃ確かに、大きな怪我でもなきゃ気づけねーよ」
当たりだったのか、永広は俯いて、口を震わせた。動揺している。
「……昔、事故にあったの。私も間違いなく即死だった呪霊の事故に。生き延びてしまった、お母さんとお父さんを出し抜いて、私なんかの分際が、どうしてか」
「……」
ようやく、永広が本質を見せた気がして、五条は安心した。なんだコイツは、唯のガキと大差ねーじゃん。
一丁前に怖いものがある。それだけで十分だ。
「あっそ、運良く生き残った訳ね」
「運なんか良くない、死にたくても死ねないのに。ここに来て何度首に縄をかけたか、何度婆さまに迷惑をかけたか、何度縄の痕が消えてしまう恐怖に襲われたか。もう嫌だ、本当は呪術師になんかなりたくないの。だってこの力を認めちゃったら私はっ」
「どうでもいい事でベラベラ喋んな。興味無い、死ぬほど」
聞き手としての器量は五条に無い。下手にアドバイスするより、黙らせた方が早かった。
永広は深呼吸をし、胸元を触った。情緒を取り戻そうとしていた。本人が1番よく分かっている。考えるより行動した方が、辛くない事ぐらい。
「……ごめんなさい、やっぱり貴方は村に帰って。私は1人で行く」
「何、崖から飛び降りんの?目覚め悪ぃよ、早く前に行け、いつもやってる事教えろ。それでいい」
五条が永広の頭をポンと1回叩いて、促した。歩き出したのは、そこから2分後だった。
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作成日時:2021年3月9日 0時