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「あーあ、あの時何が何でも拒否すりゃ良かった」


タクシーも入れない山道を歩いて20分。五条はイライラしていた。

理由はいくつか。

1つ、遠い。

2つ、めんどい。

3つ、暑い。

不機嫌にさせるには十分な理由。どちらにせよ、俺がやる事じゃねーだろとそこら辺の小石を蹴る。

すると、ガサガサと森の中から音がした。え、野生動物?マジで?と五条は身構える。

予想は的中、イノシシが五条を睨んできた。

とは言え、そこらのイノシシに負けるような者ではない五条。しかし、イノシシは戦う気満々である。


「何だよ。良い度胸してる豚じゃん」


豚じゃない、イノシシだ。そうツッコミを入れるヤツどころか、人っ子一人居ない山の中。だが、五条の声はちゃんと人の耳に届いていた。


「村に用がある人?」

「…誰?オマエ」


田舎に合うような白いワンピースを、まるで自分のためにあるのだと言うように着こなすその人物。麦わら帽子さえ被っているものだから、わざとらしい。

だが、山にいるには勿体ない顔つきの少女であった。


永広(エヒロ)A」

「ふぅん」


素直に名乗られるものだから、内心戸惑う五条。


「何、ドラマか映画の撮影でもあった感じかよ」

「無い」

「あぁ、あっそ」


てっきりこの少女は役者で、ここはドラマの撮影場所で、そう言う役を演じていたのかと思いきや、違ったらしい。

今度は予想が外れた五条。すると、先程のイノシシが五条へと突進してくる。

五条は殴ろうと拳を握った。だが、それは防がれる。


「待って」

「はぁ?イノシシ来るんだけど」

「それじゃあ待たなくていい。ただ、殺さないで」

「ハイハイ!」


五条は勢いの着いたイノシシのその身体を、両手で押さえつける。思ったより強いその力に驚けば、少女がいつの間にかイノシシの後ろに。

そのまま、抱き抱えた。


「……うわ」

「良い肉付き、この子」

「いやいやいや、イノシシって何キロだよ、女子が持てる重さじゃねぇよ」


マジかよコイツ、イノシシ持ちやがった。引く五条、キョトンと永広。

もはやツッコむだけで疲れる。

永広はそのままイノシシを道の端の方へ置き、話しかけた。


「貴方達の時間はまだ。夜になったら、好きなだけ散らかしに来なさい。容赦はしないけど」

「動物と喋るディ○ニープリンセスは知ってっけど、微塵も似てなくね?」

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作成日時:2021年3月9日 0時

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