【HQ】私を買うのは。

第四話 ページ4

「A、そこの掃除が終わったら休憩してきていいよ。」


「はーい。」



よし。


姉さんの声を聞き、
ラストスパートだと畳に雑巾を走らせる。


相変わらず個室の掃除はみんな念入りだな。
そりゃね、うん、そうなんだけど。


こんなブラック企業みたいなのがさ、
掃除はこんな念入りだなんて、ちょっと面白い。



「よいしょっと。」


畳を拭き終わり、雑巾を絞る。





「休憩行ってきまーす。」


「いってらっしゃーい。」


返ってくる姉さんたちの声がいつも嬉しい。



．．．ここにいる人たちみんな、いい人ばかりだけど、
借金の為とか、売られたとか。そんな理由の人たちしかいない。

いい意味で望んでここに来たなんて人、いないんだ。

でもこことっても稼げるから、
容姿っていう高いハードル乗り越えて、
舞とか仕事の手順も覚えて、ちょっとした教養も身につけられれば入れるの。
夜の仕事は十代後半からなんだけどね。



バケツの水を捨てて、雑巾を用具入れに仕舞う。




ちら、と時計に目をやると、
時刻は十一時少し前。


今日は、一時から舞の稽古だとか、
客扱いの心得を叩き込まれる予定。

そして、いつも通り夜は料理を運んだりだとか、
見習いとして姉さんたちのお世話をする。

あんまりお客さんの前には出して貰えないけど。
ちなみに五歳くらいの頃からやっていることだ。





．．．とりあえず、お腹空いたからなんか食べに行こ。

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