「もう他人じゃない」【降谷零】

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「Aさん、氷もう溶けてますよ」




気づけば安室さんは向かいの席に座っていた。
肩肘をついて、少しむくれた顔で

かわいい…じゃなくて。
はっとして周りを見たらお客さんは私だけだった。

ボーッとしすぎた…と思いながらカフェラテを口に含む。ほとんど水だった。

「なんか今日のAさん物思いにふけがちというか…ボケっとしがちというか」
「おい」

きっと睨んでもケラケラと笑う安室さん
あーだめだキュンってする。

「まぁ色々あるんですよ」

「色々ってなんですか」

あんたの事だよ、という言葉はぐいっと押し込んで

「思春期にありがちな悩みです」

と、安室さんには嘘は通じないからアバウトに言った。まぁ合ってるし…

「恋ですか？」

ぶふっ

「げほっ、いや、違…」

うくはないけど！！
なんだ今日の安室さん！根掘り葉掘り聞いてくるんですけど！！

「じょ、女子にあれこれ聞くのは紳士安室透としてどうなんでしょうか！」

ええいこうなったら開き直ってしまえと思ったら

「今は紳士じゃないんでいいんです」

どういうこと？？？

「か、カフェラテおかわり…」

「今休憩中なんで注文は受け付けません」

…んんん？？？？
なんだこの、駄々っ子を相手にしてるような感じは。
そういえば安室さんがむくれてたのさっき見たし、今も眉を潜めてどこか不機嫌そうな顔をしている。

「…なんで機嫌悪いんですか」

「分かりませんか？」

察しろと？？？この私に？？？

「言ってもらわないと分からないです」

「そういうことです」

「え？」



「僕は、Aさんの相談相手にはなれないんですか？」

ぽかん、としてしまった。
何も答えない私に、安室さんは益々不機嫌な顔になるとぼそっと

「…昨日のあれで少しは仲良くなれたと思ったのに」

…と言った。



ぁ、あれって…
ぽぽぽぽんと浮かび上がるあれやこれ…









ガタン、
椅子から立ち上がると少し乱暴な音がした。


「…Aさん？」

「……ダカラデス」

「え？」








「安室さんだけには、絶対言えない」



ほぼ声が震えてて聞こえたか分からない。
けど顔が死ぬほど熱くて、何も考えられないまま口を動かしたらいけないとあれほど学んだのにまた私はとんでもないことを言ってしまった。


そのまま私は払い慣れてるケーキセットのお代を机に置き、店から走り去った。



ああ、やってしまった。


こんなのもう、あなたの事が好きだと言ってるようなものなのに。

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